かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

平山秀幸監督『太平洋の奇跡 −フォックスと呼ばれた男』(上映中)


1944年、太平洋戦争末期のサイパン島。圧倒的な戦力を誇るアメリカ軍に対し、日本軍守備隊は最後の突撃を敢行し、玉砕する。しかしその日から、アメリカ軍の恐怖の日々が始まった。残存兵力を組織した大場栄大尉による抵抗が開始されたのだ。大場は47人の兵士たちと共に、512日もの間敵に立ち向かい、多くの民間人を守っていく。


(「goo映画」の解説から)


上映されたばかりなので、あまり内容には触れません。


大場大尉を演じる竹野内豊がいいです。


「フォックスと呼ばれた男」という副題がついているので、大場大尉の敵をあざむく、機略・奇襲が次々展開されるのか、とおもうと、そうではなくて、敗戦濃厚のなかで、民間人や部下を統率し、できればなんとか救いたいとおもう大場大尉の苦悩がリアルに描かれた作品でした。


竹野内豊は、ひとつひとつの出来事に感情を露出することなく厳しい表情で終始、見ごたえがありました。


平山秀幸監督の柔軟な感覚なのか、井上真央阿部サダヲ唐沢寿明など、脇役陣も、これまでのイメージにとらわれない役柄に挑戦していて、それが新鮮に映りました。


いま戦争映画は、その非人間性のみを露骨に描いたり、日米の対立をどちら側からの視点で、一方的に描いたりするのではなく、敵対した両国を公平な視点で見ようとするところまで来ているのだな、と、おもいながら見ました。


ただ、アメリカ軍のハーマン・ルイスが大場大尉を尊敬するまでに至る心の動きは、十分に描かれているとはおもえません。


味方の兵隊が、相手の作戦で次々死んでいく。その大きな要因である敵兵の指揮官を、それほど素直に賞賛できるものかなのかどうか。