小学校の低学年のころ、丹下左膳の映画はよく見た。左膳を演じたのは、大友柳太郎である。大友柳太郎の丹下左膳は何本か見たはずだが、こまかな記憶は薄れてしまっている。
しかし、「こけ猿の壺」と「ちょび安」という名前は、子どものころの記憶にある。だからあとになって、山中貞雄監督の傑作『丹下左膳余話 百万両の壺』(1935年)を見たときも、この2つの名前は覚えていたので、はじめて見るような気はしなかった。
大友柳太郎主演で、「百万両の壺」はリメイクされていたのか、あるいは、同じ素材と登場人物を利用しながら、内容を修正して映画化されていたのか、そういう詳細な記憶は消えている。
大友柳太郎の丹下左膳は、快活で、豪快だった印象がある。ユーモラスなところは、山中貞雄の左膳を継承していたのだろうか。
しかし、戦前つくられた山中貞雄以前の丹下左膳は、妖刀で人をめった切りにする、もっと虚無的なキャラクターだったようだ。どうも、そのへんのイメージがつかみにくかったが、、、
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マキノ雅弘が1953年に撮った『続・丹下左膳』は、その戦前の左膳を踏襲しているようで、この映画の左膳は、血に飢えた妖刀に誘われ、人を切りたくてウズウズしている。
山中貞雄版と同じく、主演は大河内伝次郎でありながら、性格のちがう丹下左膳をふたつ続けて見るのは、おもしろかった。
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