かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

再見〜成瀬巳喜男監督『妻として女として』(1961年)


女が階段を上る時』(1960年)の翌年に公開されている。


この作品でも雇われママを演じるのは高峰秀子。はじめは『女が階段を上る時』を踏襲しているのかな・・・とおもったが、見ていくと、じつは触感がまるでちがっている。



妻(淡島千景)と愛人(高峰秀子)が、ひとりの男を挟んで、またその財産の問題で、自分の立場を饒舌に主張しあう、という舞台劇のようなシーンが出てくる。


この雄弁さは、およそ成瀬巳喜男らしくない。


「らしくない」というのは、否定的な意味ではなくて、ちょっとびっくりというか新鮮というか・・・。



ふたりの女性に愛された男を演じるのは、森雅之


妻と愛人のあいだで、問題の種を蒔いた小心の男は、なんら口をはさむこともできず、身の置きどころなく沈黙(笑)。


演じる森雅之は、笑ってしまうくらい、みごと!