かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

神代辰巳監督『地獄』(1979年)


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日本映画で来世の地獄を映像化した作品が3本ある。そのなかで、まだ見そびれていた神代辰巳(くましろ・たつみ)監督の『地獄』を、「GyaO!」の有料版で見る。



小学生のころから、地獄絵などに興味をもっていたので、1960年に中川信夫監督の『地獄』が公開されたときは、すぐに見にいった。父の同伴だった(笑)。


子供には刺激の強すぎる映画だったが、文字や絵画で描かれたのとはちがう、動く映像の迫力で、興味が尽きなかった。


この中川信夫監督の『地獄』は、その後何度か見ているうちに、映像の妖しい美しさにも、心惹かれた。



石井輝男監督の『地獄』(1999年)は、オウム真理教や毒入りカレー事件を素材にして、かれら犯人が地獄へ堕ちて苦しむさまを描いている。


石井輝男監督の、実際に起こった事件への怒りが、映画の動機になっているのかもしれない。


ただ、、、


この作品のおもしろさは、それとはべつに、祭りの見世物小屋につくられた「地獄」をのぞくような、ちょっと安普請なつくりにある。


その遊び感覚がおもしろい。



神代辰巳監督の『地獄』は、不倫や近親相姦を犯した男女が地獄へ堕ちる。


ユーモアがなく、直球で男女の性愛の地獄図がテーマになっている。この監督が描きつづけているテーマだ、というのはわからなくはない。


けれど、長々と描かれる二世代にわたる愛欲地獄のストーリーは、見ていてだんだん疲れてしまう。描かれる愛欲図も、執拗なわりには凡庸で、おもしろくない。


神代版は、美術的にみても、見世物小屋的にみても、描かれる地獄の描写が、3作のなかで一番貧弱な気がした。


現世の愛欲図に力がはいりすぎたためかもしれないし、はじめからそれこそが、監督のネライだったのかもしれない。