近藤富枝、吉沢久子、赤木春恵、緒方貞子、吉武輝子・・・5人の女性の戦争体験が収録されている。
なかでも、赤木春恵氏と吉武輝子氏の話が印象に残ったが、ここでは、吉武輝子氏の話を引用しておこう。
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吉武輝子氏は、14歳のとき青山墓地でアメリカ兵から暴行を受けたが、それを母にいうことができなかった。母は、血を流している吉武氏の姿を見て、初潮と勘違い、赤飯を炊いてくれたという。笑えない残酷な話だが、暴行された心の傷は、戦争がおわってからも、長く彼女を苦しめる。
そのこととはべつだが、こんな回想が語られている。
終戦の前の年の春のことです。下校の途中、キーンという金属音がしたかと思うと、艦載機が私をめがけて急降下してきたんです。そのとき、乗っているアメリカ兵の顔がはっきり見えたの。そのくらい近くで狙い撃ちしているということで、向こうも私の顔が見えていたと思う。子供だということがわかっていて、撃ってきたんですね。
さいわい弾は当たらなかったけれど、あのときの恐怖は忘れません。何が怖かったって、アメリカ兵の顔ね、笑っているんです、私を見ながら。あのすごみのある笑いは、いまも目に浮かびます。眼鏡をかけていて、青白い顔の・・・。
あとで気がついたんだけれど、あれは笑っているというより、引きつっていたんじゃないかと思うの。憎しみと、それから恐怖ですね。
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戦争体験者の話は、生々しい。
今年の夏も、本で読んだり、ラジオで聞いたりした。実際に戦争体験したひとの話を聞くと、戦争の狂気、残酷さが、痛切に迫ってくる。
けれど、その語り手が、高齢で年々少なくなっていく。