かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ホセ・ルイス・ゲリン監督『シルビアのいる街で』(2007年)

シルビアのいる街で BD [Blu-ray]

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町にあるツタヤの「ミニ・シアター」コーナーでみつけ、レンタルしてみましたが、とても変った映画でした。


ネットで検索してみると、製作国は「スペイン=フランス」となってます。監督はスペイン人のようです。


ヨーロッパ映画の情報にうとくなってしまいましたが、こういうおもしろい作品がつくられているんですね。



映画がはじまって、青年がベットにすわっているのですが、これがちっとも動かないので、しばらく見て、誤ってリモコンの一時停止ボタンでも押してしまったのかな、とおもいました。


でも、よく見ると青年はじっと何かを考えこんでいますが、指先に持っている鉛筆が少しだけ動いているんです。あっ、映画はちゃんとはじまっていたんだ(笑)。



次に街が映りますが、カメラは固定されたまま。


T字路を、ひとは右から左へ、左から右へ、横切っていきます。歩く靴のコツコツという音だけが、画面で鳴っています。


しばらくして、さきほどの青年があるドアから出てきますが、特にクローズアップにはなりません。


カメラは、まだ固定されたままで、青年はドアを出てくると、こっちへ向かって歩いてきて、そのまま画面からはみ出して、いなくなってしまいます。


そのあとも、カメラは固定されたままで、人が右から左へ、左から右へ、あるいは曲がってこっちへ向かって歩いてくる・・・。


こういう固定カメラの映像で作品を撮った監督といえば、あの小津安二郎監督ですね。こんな偶然みつけた作品で、小津安二郎的表現に出っくわすとは、なんだか興奮しました(笑)。



青年はシルビアという女性を探しているようですが、説明はなく、ただカフェや街の雑踏で、美しい女性を次々目に焼きつけ、目にとまると、スケッチブックに鉛筆でデッサンしていく。


街にいる女性が次々画面にとらえられるので、どれがシルビアだろうな、っとおもってみていますが、その対象がどんどん変わっていくので、なんだかわからなくなってきます。



ここまでセリフはなし。


その後、青年がひとりの女性を追いかけて、「シルビア」と声をかけますけど、女性は反応なし。ふたりのあいだに、そのあと少しの間セリフのやりとりがあるのですが、結局女性は去っていき、全編でセリフらしいセリフがあるのは、このシーンだけでした。


あとは、街の雑踏の音だけ・・・。



ほんとうにシルビアという女性が実在したのか、青年の妄想なのか、あるいはただのナンパの手段なのか・・・それもよくわからないまま、カメラは、また青年の目と同化して、街のなかのたくさんのシルビア候補を追っていきます。


新鮮で、おもしろかったなあ。