- 作者:川本 三郎
- メディア: 単行本
『あのエッセイ この随筆』の「あとがき」に、著者のこんな言葉がある。
随筆は、いわば日向ぼっこや、散歩のようなものである。無為の時間のなかに心を遊ばせる。日々の暮しのなかに、日だまりのような時間を見つける。
まさに、川本三郎さんの本を読む楽しみは、この「日だまり」のような時間を共有することかもしれない。
川本さんの本には、著者の優しい人柄が滲んでいて、読んでいると、それがぬくもりのように伝わってくる。
下町散歩について書かれたもの、映画について書かれたものなど、どちらにしても、高みからのものはなく、博識が気持ちよくテーマのなかに溶け込んでいる。
博識といえば、川本さんの読書量はすごい。映画、文学、マンガのようなものから、郷土史のようなものまで、ありとあらゆるものが引用されて、テーマの奥行きになっている。
読む速度も遅く、ついつい本を読むよりお酒を優先させてしまうわたしは、川本さんのすごい読書量が眩しい。
次は『荷風と東京(上下)』を読もうとおもっている。荷風は川本さんが大好きな作家のひとりであり、川本さんの「散歩のお師匠さん」のようなひとでもある。
ちょうど、永井荷風のことをもっと知りたいとおもっていたときなので、じっくり味わいながら読もう。