ルー・リードが死んだというのを、ラジオで知った。こういう「つぶやき」のような音楽もあり得るんだ、と、あらためてロックの奥深さを教えてくれたひとでもある。
『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ』(1967年)も、『ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート』(1968年)も、残念ながらリアルタイムでは聴いていない。
あとになって、あの時代に、こんな音楽をやっていたんだ、と、その斬新さにびっくりした。なにしろギターはノイズのように耳障りな音を出すし、ドラムは、「ダンダンダンダン」と、単調なリズムを叩き出す・・・。
90年代ころ登場したソニックユースやダイナソーJRを聴いたとき、まっさきにヴェルヴェット・アンダーグランドを連想した。
60年代、ビートルズやボブ・ディランの革新性を、目をみはりながら堪能した世代なのに、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの先進性は、当時見過ごしていた。
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1989年に『ニューヨーク』というアルバムが発表された。翌年来日したときには、コンサートを見ている。
このときのドラムスは、ヴェルヴェット・アンダーグランド時代のメンバー、モーリン・タッカー(女性)で、相変わらず不愛想で単調なリズムが楽しかった。それがルーのギターと重なると、へんに心に響くからおもしろい。
1990年にアンディ・ウォーホールが亡くなると、ルー・リードとジョン・ケイルが一緒に追悼アルバム『ソングス・フォー・ドレラ』を発表した。ふたりだけの演奏だったが、これが素晴らしかった。
ルー・リードのギターと歌。ジョン・ケイルのキーボード、ヴァイオリンと歌。これだけでアルバムが無造作に進行していく。そのせめぎあい、とんがったサウンドにしびれた。
ふたりだけの最上のロックが、ある。
忘れてはならない。ルー・リードの作り出すメロディ、つぶやくような歌は絶品だけれど、彼の弾く、誰にもにてないギターの響きがとても好きだ。
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最後にアルバムとして聴いたのは、ヘヴィー・メタル・バンド、メタリカとの共演アルバム『ルル』(2011年)。ふしぎな組み合わせだったが、これがすごくいい。
「固定観念にとらわれるなよ。その気があれば何を試してももいいんだから」というロックの基本的な姿勢を、ビートルズやボブ・ディランが教えてくれた。
ジャンルを超えたメタリカとの共演から、そのことをもう一度、ルー・リードに教えられたような気がする。