- 作者: 朝井まかて
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/08/22
- メディア: 単行本
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電子書籍で読む。
樋口一葉の歌の師匠、中島歌子が主人公、といっても、この小説を読むまで、中島歌子という名前すら知らなかった。樋口一葉のことも、さらに幕末のこともほとんど知識がない。でも、そういう知識とは別にこの小説はおもしろくて、夢中で読んでしまった。
恋の強さ、ひたむきさも作品を一貫しているけれど、水戸藩の内紛の激しい闘争に、近親憎悪の凄まじさ、におどろく。
彼らは憎みあい、だましあい、殺しあう。
主人公登世(中島歌子)は、「天狗党」の家族たちのひとりとして、反対勢力「諸生党」に囚われ、極度に非衛生な環境のなかにおかれて、壮絶な苦しみを味わう。
囚われた女性たち、子供たちが、次々に病死し、あるいは処刑されていく様は、凄惨を極める。
主人公中島歌子の、どこか楽天的で、ひとを憎まない明るさが、暗い時代のなかで救いになるとはいえ、こんな血を血で洗う野蛮な時代はもうたくさんだ。
内紛であれ、国内闘争であれ、国と国の戦争であれ、憎しみの果ては、凄惨な結果しかうまない。
小説を読み終えて、改めてそんなことをおもう。
★
詳細な時代考証のうえに、小説的なおもしろさを加味させなければならないのだから、時代小説の作家は、研究者と芸術家のふたつの才能を兼ね備えなければならないのだろうか。
この作品がおもしろかったので、朝井まかて氏のほかの作品も読んでみたい。