かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

岡田惠和脚本「圭さんと瞳子さん」(TBSドラマ)


ドラマ「最後から二番目の恋」を見て以来、岡田惠和(おかだ・よしかず)という脚本家に注目しています。


その岡田惠和さんが、TBSの「おやじの背中」というシリーズで、1時間ドラマの脚本を書き下ろした、といううれしい情報を知ったのですが、調べてみたら、まぬけなことに、もう放送がおわっていました(7月13日放送)。



「まったくもう。再放送はあるのかよ」って、ふてていたところ、


光が丘の日帰り温泉へいって、その近くの本屋さんの棚を眺めていたら、「脚本の月刊誌 ドラマ」という雑誌があって、その9月号は、<日曜劇場「おやじの背中」シナリオ特集>。


そして、なんと岡田惠和さんの「圭さんと瞳子さん」の脚本が掲載されていました。偶然の発見です。これだから、たまには本屋さんをのぞいてみなきゃ。



仲のいい父娘の話。


娘は父を「圭さん」(田村正和)と呼び、父は娘を「瞳子(ひとみこ)さん」(松たか子)と呼ぶ。


母は瞳子さんが幼いころに交通事故で亡くなっている。母の事故死を目撃してしまった瞳子さんは、いまもひとりになると、時々パニック障害が起こる。


圭さんは、瞳子さんをそろそろお嫁にやらなきゃいけない、とおもうが、パニック障害のことが心配でもある。


圭さんが食中毒で入院。瞳子さんがお見舞いに行くと、看護師の悦子さんと圭さんが、病室で楽しそうに話している。


瞳子さんは、嫉妬する。


退院した圭さんがどこかへ出かけようとすると、瞳子さんは「悦子さんとデートでしょ」とかんぐる。でも、圭さんはそれを否定しない。瞳子さんが、いつも休みは圭さんと時間を過ごすので、誤解のままにして、瞳子さんの関心が外へ向かうよう願う。


さらに、圭さんのデートに嫉妬した瞳子さんは、好きでもない会社のひとの名前をあげて、わたしも「奥住さん」とデートがありますから、とやり返す。


そのじつ、ふたりは夕方まで、それぞれひとりぼっちで時間を費やして家に帰ってくる(笑)。



仲のよすぎる父と娘の話、といえば、すぐ思い浮かぶのが、小津安二郎監督の『晩春』(1949年)。


父(笠智衆)がお見合いすることを知り、能面の般若のような恐い表情で嫉妬する娘(原節子)を思い出します。


これは、岡田惠和さんの、小津安二郎監督へのオマージュ的な作品かもしれません。じつに淡々として心地よいあと味を残す「圭さん瞳子さん」でした。



以下は、岡田惠和さんの、「圭さん瞳子さん」作者ノートからの引用です。

なかなか書く機会のない一時間の単発、自分なりになにか挑戦したいと思いました。静謐な短編小説のような味わいが出せたらと思い、生まれたのが「圭さん瞳子さん」です。このところ饒舌な脚本を書くことが多かったのでその反動かもしれません。出来るだけ「静」のドラマにしたいと考えました。