アパートから東武東上線で川越へ出て、埼京線で乗換え、南古谷駅で下車。いつもは車でいく映画館「ウニクス南古谷」へ電車でいく。
南古谷駅で降りてみて、映画館がどの方向にあるのかわからない。見知らぬ駅へ降り立ったみたいで、新鮮だった。
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吉田大八監督、宮沢りえ主演『紙の月』を見る。
宮沢りえは、山田洋次監督『たそがれ清兵衛』(2002年)を見て以来のファンで、今回もたのしみだった。
銀行の派遣社員・梅澤梨花(宮沢りえ)は、自分の仕事や存在をどこか軽んじている夫に違和感を感じはじめている。映画ではハッキリ描かれていないが、原作では性的な関係も途絶えていて、望んでいる子どもも、得られそうもない。夫がそのことをどう考えているのかもわからない。心も疎遠になっていく。
知り合った大学生・平林光太(池松壮亮)は、年上の梨花にストレートに関心をぶつけてくる。それは梨花にとって、自分の存在価値の発見でもある。
光太の情熱に、梨花も惹かれていく。
ラブホテルでのラブ・シーンの激しさは、夫への不満の裏返しでもあるだろう。梨花は、光太との恋愛に溺れていく。
光太の学費の借金を払ってあげようと一時的に顧客のお金を借用したのが、多額の横領へのキッカケになっていく。
光太との華やかな恋愛をキープしていくために、お金持ちの女性を演じる梨花は、次から次へ横領を重ねていく。もう歯どめが効かない。コントロールを失った宮沢りえの姿が、せつなくみえる。
原作者の角田光代は『八日目の蝉』でも、誘拐した子どもに必死に愛情を注ぐ女性の哀しみを描いている。読んでいるうちに、読者はこの女性に共感し、なんとか警察の手から逃れられないか、と女性の気持ちに寄り添ってしまう。作者の筆力だろう。

- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/01/22
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『八日目の蝉』に比べると、『紙の月』の梅澤梨花は、自業自得のところも多いけれど、共通する部分もある。
原作には複数人物の視点が用意されていて、そのまま映画化してもわかりにくいかもしれない。映画は、それを大胆に改変し、原作には出てこない小林聡美、大島優子を配置して、シンプルにサスペンスを盛り上げていく。
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娘に子守りの手伝いを頼まれて映画を見れなかった妻が、双子の姉の方を抱っこして、映画館のロビーで待っていた。
7ヶ月の女の子は、人の流れに視線を泳がせていたが、近づいていくと、大きな目をわたしに集中させた。