川越から近くにどこか紅葉のきれいなところはないか、ネットで検索してみたら「秩父御嶽神社」がヒットした。ここならJR川越線から西武池袋線への1回だけの乗換えで行ける。
11月28日、車で仕事にいく妻に川越駅で下してもらう。JR川越線は、本数が少ないので、30分ほどスターバックスで時間調整。
電子書籍で、林芙美子の『浮雲』を読む。成瀬己喜男監督の映画『浮雲』(1955年)は見ているが、原作を読むのははじめて。
戦時中の1943年、農林省のタイピストとして仏印(ベトナム)へ渡ったゆき子は、同地で農林省技師の富岡に会う。当初は富岡に否定的な感情を抱いていたゆき子だが、やがて富岡に妻が居ることを知りつつ2人は関係を結ぶ。終戦を迎え、妻・邦子との離婚を宣言して富岡は先に帰国する。
後を追って東京の富岡の家を訪れるゆき子だが、富岡は妻とは別れていなかった。失意のゆき子は富岡と別れ、米兵の情婦になる。そんなゆき子と再会した富岡はゆき子を誹り、ゆき子も富岡を責めるが結局2人はよりを戻す。
富岡はゆき子をうとましく思う。ゆき子は仏印のころとは打って変わった富岡の冷たい態度を憎む。しかし、ふたりは別れることができない。「腐れ縁」という言葉が浮かんでくる。
映画では、不実でダメ男を森雅之がみごとに演じ、そんな男の誠意のなさを憤りつつも別れられない女を高峰秀子が好演している。
男女の心の動きは、映画よりも小説の方が説明的で、理解しやすい。読み終わったら、もう一度成瀬己喜男監督の『浮雲』も見てみよう。
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JR川越線に乗る。この電車は、自動ドアではない。下りるときは、ドアのそばにある「開」のボタンを押さなければならない。じっとドアの開くのを待っていると、電車は発車してしまう(笑)。
ものすごくローカル線に乗ったようでおもしろい。実際窓外の風景も、自然が多い。
東飯能駅で下りて、乗換えまでに時間があったので、駅構内の「丸広デパート」の本屋さんへいって、時間を過ごす。時間が早いので店内に人が少なく、かえって落ち着かなかった。
吾野駅下車。いっしょに下りたひとたちは本格的な登山の格好をしていて、わたしとは逆の「顔振り峠」の方角へ歩いていく。わたしひとり、ひとも車もあまり通らない道路を「秩父御嶽神社」へ15〜20分ほど歩く。
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秩父御嶽神社の紅葉はきれいだった。入山料の100円は安い。入口から紅葉した木々が続き、中腹の東郷元帥の銅像周辺は、真赤に染まっている。
何年か前、北小金の本土寺へ紅葉真っ盛りのときに行ったことがあるけれど、それに並ぶくらい美しかった。
ただ山の上の御嶽神社の本殿までは、急な上り坂が連続しているので、きつかった。石段があるけれどあんまり急なので、避けて、つづら折りになっている細い山道を登る。
本殿に着いたときは、息がぜいぜいした。ここまで来ると、紅葉はない。紅葉の景色を楽しむのが目的なら、東郷元帥像のあたりまで登れば十分な気がする。
予想以上の紅葉狩りの成果をよろこびながら、ゆっくり下山する。
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帰りの吾野駅までは、山道のコースの案内板があったので、心細いが広い道路には出ず、低い山の散策コースを歩いた。
駅へ着いたら電車がちょうど行ったばかりで、次の電車まで30〜40分ほどの時間がある。駅前に一軒だけ、食堂兼のみやげ物屋さんがあったので、瓶ビールと山菜うどんを注文。これから川越へもどって、手ごろな居酒屋を探そうと思いながら、ビールで喉を潤す。