かぶとむし日記

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青木理著『抵抗の拠点から〜朝日新聞慰安婦報道の核心』を読む。


年末いちばん最後に電子書籍で読んだのが青木理(あおき・おさむ)著『抵抗の拠点から』。


抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心

抵抗の拠点から 朝日新聞「慰安婦報道」の核心


ヘイトスピーチに嫌悪を感じ、衆議院選挙の結果にがっかりし、朝日新聞をめぐる騒動にも違和感を感じていたので、この本を手にとってみた。


「はじめに」に、次のような文章が出てくる。頭がまとまらないので引用だけ。

(略)朝日への猛烈な批判の高まりは、一メディアが誤報を認めて謝罪に追い込まれたという以上の意味を孕んでいる。突き詰めて言えば今回の事象は、日本社会が歪な変質を遂げつつある過程で起きた「歴史的な事件」と位置づけてもいいのではないか。


売国」「反日」「自虐」「日本を辱(はずかし)めた」「日本を貶(おとし)めた」。一連の慰安婦報道をめぐっては、こんな罵声が一部の新聞や主要週刊誌から連日のように朝日に浴びせられてきた。ネットなどではさらにすさまじく、特定の個人攻撃までが繰り広げられ、何の罪のない家族のプライバシーまでが暴き立てられている。


一方、朝日のことを「政権打倒を社是としている」と言い放って敵意を燃やすものが政権の座に就き、戦後民主主義やリベラルを嫌悪する為政者たちがかつてないほど永田町を跋扈(ばっこ)している。街角にはヘイトスピーチをがなる連中までが登場し、隣国への敵意を露わにして「愛国」を鼓舞するムードは、メディアにも、政治にも、社会にも、黒々と広がりを見せている。


(略)


繰り返すが、メディアは時に誤報を犯すものであり、それは速やかに訂正されねばならない。誤報そのものについて批判を受けるのは至極当然だが、朝日が一部の記事を取り消したからといって、慰安婦問題は変わらず存在しつづける。国際社会や隣国との関係を含め、今後も重要なイシューであり続けるだろうし、メディアは今後も「自国の負の歴史」の本質と実態を真摯(しんし)に伝え続ける必要がある。


知識も言葉も不足しているわたしには、喉につかえていた魚の骨がとれたような、ひとつひとつがなっとくの一文だ。