![の・ようなもの [DVD] の・ようなもの [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/61otAMVrPGL._SL160_.jpg)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/11/27
- メディア: DVD
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杉山泰一監督の『の・ようなもの のようなもの』を見たら、もとの森田芳光監督の『の・ようなもの』が見たくなった。おもしろかった記憶はあるけれど、細部はあいまいになっている。新人の志ん魚(しんとと)が何かしゃべりながら深夜の浅草を歩き、夜があけるシーンが印象に残っているが・・・。
DVDをレンタルする。35年ぶりに見直して、やっぱり新鮮だった。
志ん魚が高校生の彼女の家にいて(「堀切駅」の近く)、彼女の父の前で落語の「二十四孝」をやっているあいだに、終電を逃してしまう。その描写がおもしろい。
明かりの消えた堀切駅の前に立つ志ん魚が映る。これで見ているものは、志ん魚が終電に間に合わなかったことがわかる。でも、実際の志ん魚はその時間、まだ彼女の家にいて、彼女の父の前で落語をやっているのだ。明かりの消えた堀切駅の前にたたずむ志ん魚は、彼の心象風景のようだ。そのリアルでない映像が、とても斬新に感じられる。
最後に、先輩の落語家・志ん米(しんこめ。役者は、尾藤イサオ)が真打ちになったお祝いをビヤホールでやる。にぎやかに志ん米の真打ちパーティで盛り上がっているが、音声はカットされている。その間に、志ん魚が憧れている魅力的な年上の女性(秋吉久美子)が、引っ越しして、大阪へ行こうとする映像がはさまる。こちらも、音声がない。無音のシーンが続く。
落語家として先が見えない志ん魚、心を許せるすてきな女性も遠くへ去ってしまう志ん魚・・・彼のこれからの不安やさびしさが痛いほどに伝わってくる。こういった無言劇に、森田マジックを感じてしまう。
当時見たときには感じられなかった感動もある。背景に映る35年前の東京の風景がとても懐かしい。思わず見入ってしまった。