かぶとむし日記

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是枝裕和監督『海よりもまだ深く』と平成公園のバラを見る(5月22日)


妻の運転で、川越の「ウニクス南古谷」へ是枝裕和監督の『海よりもまだ深く』(午前9時50分上映)を見にいく。




『海よりもまだ深く』は、母を樹木希林、息子を阿部寛と、『歩いても 歩いても』と同じ俳優を配置している。阿部寛の役名は、どちらも良多。予告編を見たとき共通点があるのでは、とおもっていたけれど、予想以上に2つの作品はつながっている。


『歩いても・・』は、父(原田芳雄)が途中で亡くなるが、『海よりも・・』では、映画がはじまる時点で父は 亡くなっている。


母は団地でひとり暮らし。この母のところへは、良多(阿部寛)の姉(小林聡美)がちょくちょく遊びにきているようだ。この姉は『歩いても・・』の姉(YOU)と重なる。姉と弟はそれほど仲がよくはないのも、どちらも一緒。


『歩いても・・』の良多(阿部寛)と彼の妻(夏川結衣)には、ひとりの男の子がいた。『海よりも・・』も、家族構成は同じ。ただ、『海よりも・・』では、生活能力の乏しい良多は、妻(真木よう子)に離婚されている。良多は、いまだ元妻に未練たっぷりだけれど、元妻は別の男性と新しい生活に踏み出そうとしている。


時間的にみて、『歩いても・・』の数年後が、『海よりも・・』で描かれている、ようにもみえる。



台風の夜、良多と妻と子は、母の暮らす団地で一泊する。良多は、やり直せる最後の機会ではという気がある。子どもと台風のなか外へ飛び出して遊びながら、もとの家族へもどれるのではないか、とわずかな期待をつなぐ。しかし、妻の決意は固い。台風が過ぎた翌日、妻は溜まっている慰謝料を催促しながら、良多と別れていく。


ダメ男を演じる阿部寛がいい。阿部寛をこういう家族ドラマのふつうの役に抜擢したのは是枝監督の慧眼の成果だとおもう。阿部寛の背が高すぎることが日常ドラマをやる障害になっていた、という話をきいたことがあるけれど、是枝監督は作品のなかで、良多が背の高いことをちょっとしたジョークにも使っていて、その障壁を軽くクリアしている。


樹木希林の母は、名人芸をさりげなくふつうにやっているのがすごい。是枝裕和監督の信頼厚く、『歩いても・・』以来、毎回の出演で、是枝作品に欠かせない存在。


海街diary』のような華やかさはないが、ズレが生じた家族の形を繊細に描いた秀作。妻に見放された良多が気の毒で、見ながらなんとか復縁できないか、とおもったりしたけれど(良多の母もそれをのぞんでいる)、現実はそう甘くない。


『海よりもまだ深く』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=nN4bzbwqtGg



是枝裕和監督の新作を堪能したあと、川島(かわじま)の平成公園のバラが見ごろではないか、とおもい妻と見にいく。クルマだと、そう遠くない。駐車場がいっぱいで、すこし待ったがまもなくはいれた。


ここはバラの長いトンネルが続いている。最盛期にそれを見たことがある。が、きょうは残念ながら盛りを過ぎていた。遠目ではまだ美しいが、近くから見ると枯れかかっている。トンネルをくぐって、そこで売っているカレーライスを食べて、公園を出る。