かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

松本武彰監督『ハトは泣いている』を見る(6月25日)



浦和駅12時に、いとこ(従姉妹)のEmiちゃんと待ち合わせる。いとこは、最近、電車に乗るときあわてて足をくじいたそうで、左だけ松葉杖をついていた。浦和駅近くの食堂で昼食をとり、映画『ハトは泣いている』の自主上映がある「ほまれ会館」へいく。会館はひとがいっぱいだったが、いちばん前の席があいていたので、並んで椅子にすわる。



映画は、2つの出来事を並行して描く。


ひとつは、中垣克久氏の立体作品の添え書きに安倍政治批判の文言がはいっていたため、右翼からの抗議や脅しを受け、東京都美術館が作品を撤去した「都美術館事件」。中垣克久氏本人が、インタビューや映像で事件の経過を語っていく。


もうひとつは、さいたま市の「三橋公民館」が、俳句教室の互選で選ばれた「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の俳句を、公民館の月報に掲載拒否した「九条俳句事件」。


共通しているのは、行政の、政権の意向を気遣っての忖度(そんたく)・自粛。長いものになびく姿勢。


「九条の句」掲載拒否は、集団的自衛権の是非が問われているときに、この句は「公平・中立を欠いている」、「公民館の意見と誤解される恐れがある」というのが理由。さいたま市清水勇人市長は、定例会見で、掲載拒否を「おおむね適正だ」と追認している。


市民は「九条俳句」応援団を結成し、掲載を求めるが、さいたま市の行政は、拒否の姿勢を崩さない。1年前(2015年6月25日)、市民応援団は、俳句の作者を原告に、さいたま地裁に提訴。闘いは、いまも続いている。



インタネットで、「九条俳句事件」のことは早くに知った。報じたのは「東京新聞」。


梅雨空に「九条守れ」の女性デモ


自然に見た光景を詠った、普遍性をもった作品。この句が「公平・中立を欠いている」というさいたま市の判断の方がおかしい。「公平・中立」という言葉の理解が、安倍政権とそっくりなのが怖い。


はだしのゲン」を図書室の書棚から外すという学校が出てきたり、平和資料館から戦争での加害を意味する展示を撤去するなど、安倍政権になってから、忖度・自粛の傾向が激しくなっているので、この映画のコンセプトは、ストレートに理解できる。


映画が終わって、市民応援団のひと、「九条俳句」の作者、弁護士などの挨拶がある。「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」の作者を間近に見ることができたのも、うれしかった。


『ハトは泣いている 時代(とき)の肖像』予告篇↓
https://www.youtube.com/watch?v=PVhLKiAjFXU


「『九条俳句』応援団」のサイト↓
http://9jo-haiku.com/modules/news/index.php?lid=39



会館を出て、 Emiちゃんと、浦和駅の近くで飲む。安倍政権への苛立ちをあけすけに話せるひとは身近にあまりいないので、少しだけ、ふだんの鬱屈を晴らせた。