かぶとむし日記

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西川美和監督『永い言い訳』を見る(10月22日)



10月22日、イオン板橋の5Fで妻と待ち合わせ、西川美和監督の『永い言い訳』を見る。『永い言い訳』(原作、西川美和)は、妻もわたしも先に小説の方を読んでいて、映画の公開をたのしみにしていた。



冒頭はショッキングにはじまる。


観光バスが事故に遭遇し、津村(本木雅弘)の妻(深津絵里)は、友人といっしょに死んでしまう。妻が事故にあったとき、小説家の津村(本木雅弘)は、若い女(黒木華)を家に泊め、浮気をしていた(黒木華のラブシーンは、ちょっとドキっとする)。夫婦のあいだは冷めていて、津村は、妻が死んでも、涙ひとつ出てこない。警察に聞かれても、妻が旅行へいくとき、どんな服装だったかも思い出せない。それでも、売れっ子小説家は、いままさに悲劇のひととして、ワイド・ショーなどで紹介される。


津村は、妻が家以外のところで、どんなひとたちとどんな時間をすごしていたのかも関心がなかったが、事故で亡くなった遺族の集まりで、妻といっしょに死んだ妻の友人の・・・その夫・大宮(トラッック運転手)を知る。津村に子供はなかったが、大宮には、中学を受験する男の子と小さな女の子がいた。


大宮は、トラック運転手なので家をあけることが多い。津村は、留守のあいだに子供たちを見るため、週に一度か二度、大宮の家に泊まるようになる。


この大宮家族、とかかわっていくうち、津村に変化が起こっていく。この言葉で説明しにくい津村という人間の変化をていねいに描いていくのが西川美和監督の世界。『永い言い訳』は、それをじっくりたのしめる。


本木雅弘は、はじめ売れっ子小説家らしいオシャレな、見ようによれば軽薄な顔をしている。それが、次第に髪はのび、身なりもかまわないようになる。しかし、ふしぎなことにそうなると、軽薄さは薄れ、考え深い男の顔になっていく。このあたりもみどころのひとつ。


それと、子供がいい。中学受験の男の子は、母の死で私立の受験をやめるかどうか悩んでいる。小さな女の子は、母を突然亡くしても、それがどういうことかまだよくわからない。女の子は、おもうようにならないと癇癪を起こしてキーキー泣いたりする。そういうものだ、とおもう。小さな子は、母の死もピンとこないし、それよりは目の前がおもいどおりにならないことのほうが重要のようだ。


この女の子を演じるのは白鳥玉季。演技でない演技をしていて、可愛い。西川美和監督は、独身で子供もいないのに、自然のままの子供を生き生きと描く。


永い言い訳』↓
https://www.youtube.com/watch?v=v1VXIiDyu3A



ということで、妻もわたしも、見る前からの期待を裏切られず、満足。夕方5時から六本木の「EXシアター」で、レッド・ツェッペリンのトリビュート・ライブを見ることになっていたので、妻とは映画館のある5階で食事して、別れる。