かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』を見にいく(10月22日)。

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10月22日、月曜日。川越を出て、新宿の「テアトル新宿」へ、白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』を見にいく。


30分ほど時間があったので、靖国どおりをはさんだ向かいの喫茶「ルノアール」によって、電子書籍で、「きみの鳥はうたえる」を再読。


モーニングに出てくるゆで卵を剥くのに奮闘する。わたしは、ゆで卵を剥くのが苦手。いつもカラが短い破片になって、中身に貼りついてはがれない。いいかげんめんどうになってそのまま食べると、口のなかでガリッといやな感触がある。破片を口から取り出さなければならない。これで苦労する。


ゆで卵を剥くときいつも思い出すのは、中山道国道17号)の志村あたりにある「立ち食いそば屋」さん。わたしが「天ぷらそばにゆで卵をいれてください」って注文すると、なんらめんどくさがるわけでもなく、ササーッとカラを向いてべつだんなにごともなかったように、「はい、おまちどおー」って丼を目の前に出してくれる。とくべつ、自慢している様子もない。



12時20分から、白石和彌監督の『止められるか、俺たちを』を見る。



「止められるか、俺たちを」予告編 10月13日公開

2012年に逝去した若松孝二監督が代表を務めていた若松プロダクションが、若松監督の死から6年ぶりに再始動して製作した一作。1969年を時代背景に、何者かになることを夢みて若松プロダクションの門を叩いた少女・吉積めぐみの目を通し、若松孝二ら映画人たちが駆け抜けた時代や彼らの生き様を描いた。


(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/88974/


まずは、門脇麦という女優が主演ということ、時代背景が1969年から1971年くらいであること、そんな動機で見にいく。


若松孝二監督の映画は、ピンク映画(エロい映画)が中心だったので、興味はあっても、なかなか映画館へはいる勇気がなかった。見た映画はないか、とネットで検索してみたら、ずっとあとになって撮った映画が3本みつかった。


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008年)、『キャタピラー』(2010年)、『1・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(2012年)の3本。


若松孝二監督は、2012年に76歳で亡くなっている。だから、見たのは、ほんとうに晩年の作品ばかりだ。この映画に登場する若い、そして激しい、権力を忌み嫌って、映画で爆弾をしかけようとする若松孝二作品は、見たことがない。


この若松孝二監督と、その弱小プロダクションで映画をつくる情熱に燃える若者たちの姿は、心をとらえる。わたしは、映画が好きなわりには、その製作の裏側、作り手の苦労に想像を働かせないファンだった。だから、こういう熱気のある映画づくりの裏側を見ると、心を動かされる。


わたしの好みでいえば、この映画の演出は、オーバーすぎる。もっと抑制的なほうが好き。でも、若松孝二という激しい情熱をもった監督の熱さを伝えるには、これでよかったのかしれない、ともおもう。


わたしは、簡単に映画を見て、好き嫌いをいうけれど、製作するがわは、予算をにらみながら、集客数を考え、どこまで自分たちの主張をなかにこめるか、苦労しているのだ。とくに、大手予算がバックにない独立プロは、不本意な仕事もしなければならなかっただろう。


そういうことを教えてくれる映画だが、役者の熱意もあって、おもしろい作品になっている。なんといっても門脇麦がうまい。この女優は、独自の路線を走っている。


池松壮亮と共演した、三浦大輔監督『愛の渦』(2013年)では、門脇麦は(出演者全員が)、映画全編を、ほとんど裸で通している(もちろん、隠すべきところは隠している)。


マンションの一室に集まって「乱交」に参加する男女を描いた映画だからだ。彼らのおおくは、みな臆病で、恥ずかしがり屋で、恋人をつくりそびれている男女ばかり。けっしてsexをもっと探求しようという「マル・キド・サド」的ひとたちの集まりではない。sexに飢餓感をもっているふつうのひとたち。


そんな男女のなかで、若い女子大生を演じたのが門脇麦。すごい女優だなあ、というのがこの女優の第一印象。この作品で裸になった池松壮亮門脇麦も、そのあとでどんどん頭角をあらわしてきている。


止められるか、俺たちを』でも、映画が大好きで、若松プロに入社した少女「めぐみ」が、映画製作のスタッフとして、どんどんたくましくなっていく姿を、門脇麦は、自然に、でも情熱的に演じている。


山下敦弘(やました・のぶひろ)監督の初期の作品、『どんてん生活』(1999年)、『ばかの箱船』(2002年)、つげ義春原作『リアリズムの宿』(2003年)などで、風采のあがらぬダメ男を徹底的に演じた山本浩司が、若松孝二の片腕、足立正生役を演じているのもうれしかった。


山下作品の初期の映画は彼なしに成立しないが、その後山下敦弘がメジャーな監督になってくると山本浩司が主演をはらなくなった。それがさびしかったが、この映画で、ひさびさ彼の顔をたっぷり見ることができた。


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俳優、山本浩司氏。



帰りは、立飲み「春田屋」へ寄り、ホッピー・セット(焼酎をもう1杯追加)、緑茶ハイ2杯を飲みながら、つまみを多めに食べて、お昼にする。


けっこういい気持ちでアパートへ帰った。