かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画『新聞記者』をめぐる話(のんちさんへのコメント)

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こちら、現役新聞記者たちの対談も参考になります。
https://natalie.mu/eiga/pp/shimbunkisha



のんちさん、コメントありがとうございます。


のんちさん↓

私のなかでは、政治には距離をおくひとという印象が強かったsmokyさんが、この安倍政権下における日本の市民社会の崩壊への危機感を募らせて、いろんな発信をされていることを感じてはいながら、なぜか、自分自身はすこし脱力したような状況で。


のんちさんがおっしゃるように、わたしはあまり政治的な人間ではなくて、映画やロックのことを考えているほうがずっと好きなんですけどね(笑)。


最近会った古くからの知り合いに、安倍政権に対する危機感を話していたら、「むかしは政治の話を向けても興味なさそうだったのに」といわれました。


「安倍が出てきてから、日本の民主主義や平和主義が、どんどん壊されているからだよ。日本じゅうの空気まで変わってしまったろ」


といっても、そのひとはあまりピンときていないようでした。彼はむかし、わたしよりよっぽど学生運動に熱心だったひとだけど、いまの安倍政権には何も危機を感じていないようです。


彼にとって学生運動は、ただの流行にすぎなかったのか?
あるいは、歳をとるとそこまで感度が鈍ってしまうのか? 


わたしはそのひとに失望しました。



のんちさん、わたしは、このまま安倍政権が続いては恐ろしいことになる。歴史をもとに戻してはいけない。そんな動機で、政治に目を向けるようになりました。


わたしは、戦後まもなく生まれた世代で、敗戦後の空気を多少知っています。


もう戦争はこりごりだ。二度と戦争はしたくない。わたしたちの上の世代は、そう思っていたはずです。


街の路上には、手や足を失った兵隊さんたちが、軍服のまますわっていました。彼らは、アコーディオンやギターを弾きながら、お金や食べ物を求めていました。彼らに同情したひとは、脇にある缶やザルに小銭をいれながら通り過ぎていく。


戦後まもなく(わたしの少年時代)、街のあちこちで見かける光景だったような気がします。


戦後のスタートは、黙っていても日本中が反戦の気運に包まれていたとおもいます。日本はもう戦争をしない国になりました、という副読本も中学で読みました。


その空気が少しずつゆるみ、A級戦犯を祀る靖国神社を、首相や国会議員が参拝するようになります。そのたびに、中国や韓国から反発がでました。


若いとき読んだ半村良の『軍歌の響き』(1974年発行)という近未来のSF小説も記憶に残っています。若者は、国家に対して、緊急事態発生のばあい「自分は自衛隊に協力いたします」という予備登録をする。


その予備登録証をもっていると、日常なんでも割引がきくし、特典がつく。逆に受験や就職なども、その予備登録証がないとまともな扱いを受けてもらえない。若者はいますぐ戦場へいくわけではないのでどんどん予備登録していく。


実際にありそうな話です。新しい徴兵制の形のようにおもえて不気味でした。



安倍政権になって軍備化がすすみ、戦争法が解釈改憲で成立する。半村良が「軍歌の響き」で描いた近未来が、ますますリアルになってきました。


「美しい日本をとりもどす」という、この「日本」というのは、いつの日本なのか?


自民党の「憲法草案」を、憲法学者小林節さんは、「『大日本帝国憲法』の現代語訳」といっています。国民主権ではなく、天皇を元首にもどす憲法です。個人の自由には、さまざまな制約が課されます。新しい憲法どころか、古い憲法の復活です。


長期政権のあいだに、日本が敗戦でやっと獲得した「民主主義」の基本となる「言論の自由」もだんだんに狭められ、メディアが政権の批判をしなくなりました。とくにテレビは、国民の関心をほかにそらす役割しか果たさなくなりました。


官僚は萎縮・忖度して、森友・加計問題でも、明らかにウソの答弁をするようになりました。


こうした状況を危惧した国連は、日本にいくつかの警告を発信していますが、安倍政権は無視しています。



のんちさん↓

そういう自分の頭にガツンとくる映画でした。韓国映画で、韓国民主化運動が正面から扱われ、大ヒットするのを横目で見ながら、どうして日本ではそれができないのかな、と、少し諦めみたいな気持ちもあったかもな、と思います。


のんちさん、わたしも長らくそうおもっていました。韓国映画の『タクシー運転手』、『1987 ある闘いの真実』、『共犯者たち』を見ながら、韓国の映画製作者たちの勇気をうらやましくおもっていました。


映画『新聞記者』は、最後のクライマックスがフィクション(いまのところ)になってしまうのが残念ですけど、現状の政治の問題を扱った作品の出発点としては上出来だとおもいます。これがヒットして(ヒットしているようですね)、勇気ある第2弾、第3弾が発信されるといいのですが。



最初、のんちさんへのコメントとして書きだしたのですが、あまりに長くなってしまったので、ブログ本文に投稿させていただきます。


のんちさん、ありがとうございました。早くブログへもどってきてください(笑)。