中川信夫監督の『東海道四谷怪談』(1959年)。おそらく全映画化のなかで、いちばん怖くて美しい「四谷怪談」の映画。
映画『東海道四谷怪談』の幽霊登場シーン。怖がりのひとは見ないでください。
https://www.youtube.com/watch?v=LtjGiYYY0fM
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7月28日、日曜日。晴れ。蒸し暑い。
昨夜の泊まり客は、風邪でわたしが寝ているうちに帰っていた。いちど起きて、朝の挨拶をしてから、わたしはまた眠った。そのあいだに、帰ったようだ。
起きると汗をかいていて、熱が下がっている。
この日は、終日家で過ごす。
外は暑そうだし、体調も悪くて、咳が頻繁に出る。それに、なぜか大きな目ヤニが出る。目も疲れているのか。
ゴロゴロしながら、読書に専念する。妻も、来客がみんな帰ってから、ソファで昼寝している。
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午後、「川越百万灯まつり」を見てきた娘夫婦と双子の4人くる。双子は、浴衣でやってきたが、暑そうなので、すぐ脱がして、シャワーを浴びさせる。
ちびたちが小泉八雲の絵本を読んでいるというので、怪談の話になる。娘の夫は、怪談や怖い話は嫌いなのでむかしから聞くのも見るのも避けている、という。娘は、怖い話は嫌いではない、といいながら、「四谷怪談」の話になり、
「『四谷怪談』って、井戸で皿を数える話でしょ」と、言い出す。
「井戸で皿を数えるのは『番町皿屋敷』。『四谷怪談』は、夫の伊右衛門が、若い女ができたので、ジャマになった妻のお岩さんに毒を飲ます話だよ」
わたしは、子供のころから怪談が好きだった。好きといっても度胸があるのではなく、怖いもの見たさ、でよく幽霊映画や化け猫映画を見にいった。
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「学校の友達と度胸試しなんかやらなかった?」
と娘がいうと、幽霊が苦手な娘の夫は、
「そういうのは避けてたからやったことない」
といって笑っている。
「肝試しの話っていえば、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン )の怪談に怖い話があるね」とわたし。小泉八雲を読んだ人なら、きっと記憶に残っているのではないか。
細かな部分は忘れてしまったが、こんな話。
どこかの小さな神社だかに幽霊が出るところがある。あすこはほんとうに出るらしいよ。そんな話をしていると、子供をおんぶしたおばさんがそばにいて、「わたしは幽霊なんてぜんぜん信じないよ」という。
で、夜その神社までおばさんが何か証拠になるものを置いてきて(あるいは、証拠になるものをもってくるのだった、かもしれない)、明日明るくなってからみんなでたしかにおばさんがそこへいったかどうか確認しよう、そんな話がきまる。
「幽霊が出るなんてばかばかしい」とぶつぶついいながら、子供をおぶったおばさんは、夜道を神社まで小走りにいく。 無事神社へついてみんなとの約束のものを置き、帰ろうとすると、急に寒くなり、髪をうしろへひっぱられる。おばさんは、恐ろしくなって帰り道を走りに走って、みんなが待っている場所へたどりつく。
無事にもどると、急におばさんは威張って「幽霊なんかいないよ。ちっとも怖くなかった」と強がってみせるが、みんなは、口をあき、青い顔をしながらおばさんの背中を指差す。
おばさんが振り返ると、おぶっている赤ん坊の首がなかった、という話。
註:あとで調べたら、これは「幽霊滝の伝説」という話でした。40年くらい前に読んだのでだいぶ細かな記憶がちがっていました。
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「この話をしたあとだと、ずいぶん強がっているやつでも肝試しをビビっていたな」とわたしがいうと、娘はその話は少し憶えている、といった。娘の夫は、ぜんぜん知らない、といった。
怪談話がひと区切りつくと、娘家族は帰り仕度をはじめ、わたしはホッピーを飲みながらのタブレット読書にもどる。