映画『愛を読むひと』。
先に、スティーブン・ダルドリー監督、ケイト・ウィンスレット主演の映画『愛を読むひと』(2008年製作、アメリカ・ドイツ合作)をDVDで見る。
そのあとから、ベルンハルト・シュリンク著『朗読者』(松本美穂訳、1995年出版)を電子書籍で読んだ。
- 作者:ベルンハルト シュリンク
- 発売日: 2003/05/28
- メディア: 文庫
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『愛を読むひと朗読者』日本版予告編 The Reader Movie Trailer
15歳の少年ミヒャエルは、21歳年上の、ハンナの成熟した女性の魅力に熱中する。毎日、彼女のことで頭がいっぱいになる。
前半の内容は、映画も原作もそれほど変わらないが、映画は、主演のケイト・ウィンスレットが演じるハンナが魅力的。どこか不機嫌で、ときどき感情を爆発して怒り出し、ミヒャエルを困惑させる。しかし、ミヒャエルは、そんなハンナのすべてに惹かれている。
前半の最後、ハンナは、ミヒャエルに何も告げず、突然失踪してしまう。
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後半はふんいきがガラッとかわる。少年は、大学へ進学して、法科を選択している。ゼミで実際の裁判を見学する。そこでミヒャエルは、かつて愛した女性・ハンナと再会する。
ハンナは、戦争中、ナチス親衛隊で働き、強制収容所の看守をつとめていた。彼女は、いま当時に犯したとされるある罪で裁判にかかっていた。
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後半は、原作のほうが、成人したミヒャエルの複雑な心情が論理的に描かれていて、映画よりわかりやすかった。文字表現の利点があわられている。
映画が表現不足とはおもわないけれど、ミヒャエルの複雑に揺れ動く心情を、映像だけでとらえるのはむずかしい、とおもう。ムリに描くと説明が過剰になってしまう。
ハンナは、裁判の罪が重くなっても隠さなければならない秘密を抱えていた。それが何かは『朗読者』というタイトルと関係してくる。
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訳者が、本の最後に説明しているが、著者のシュリンクは、ハンナが、ナチス親衛隊のなかでおこなった行為を、現代の視点で糾弾しようとしていない。
彼女にとっては、その状況下のなかで、効率よくさばいていかなければならない「仕事」だったのだ。
「選別をしないで済ませようとした人は誰もいないんですね?(略)」(裁判長)
「はい」(ハンナ)
「囚人たちを死なせることになるとはわからなかったのですか?」「いいえ、わかっていましたが、新しい囚人が送られてきましたし、古い囚人は新しい人たちのために場所を空けなければいけなかったんです」
「ではあなたは、場所を作るために、『あんたとあんたとあんたは送り返されて死ぬのよ』と言ったわけですか?」
ハンナには、裁判長がその質問で何を訊こうとしているのか、理解できなかった。「わたしは・・・わたしが言いたいのは・・・あなただったら何をしましたか?」
それはハンナの側からの真剣な問いだった。彼女はほかに何をすべきだったのか、何ができたのか、わからなかった。そして、何もかも知っているように見える裁判長に、彼だったらどうしたかと尋ねたのだった。
このあとシュリンクは、数行はさんで、
「裁判長の返答は頼りなく、つまらなかった。みんながそう感じた。聴衆は失望のため息をもらし、裁判長とのやりとりである程度勝利を収めたハンナを、不思議そうに見つめた」
と書いている。