Amazonプライムの動画配信で、小津安二郎監督の『大人の見る繪本:生まれてはみたけれど』(1932《昭和7》年)を見る。
脚本は、ゼェームス槇こと小津安二郎。
活弁は、松田春翆(二代目)
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父の健之介(斎藤達雄)は、会社では、専務・岩崎(坂本武)のお気にいりだ。
そのせいあって、とうとう健之介は、岩崎専務近くの、東京郊外に自分の家を建て、引っ越してくる。
健之介は、自分でもトントン拍子の出世がうれしく、長男・良一(菅原秀雄)と次男・啓二(突貫小僧)には、「うんと勉強して偉くなれ!(おとうちゃんのように)」と鼻高々にいう。
しかし、転校したばっかりの良一と啓二は、学校へ行くといじめられる。
ふたりは、家を出ると学校へいかないで、弁当だけ食べて家(うち)へ帰る。
担任教師が、家にやってきて、ふたりの不登校がわかってしまう。父・健之介に叱られる良一と啓二。
しかし、賢い良一は、家へ出入りする酒屋のお兄さんと取引して、背の大きいガキ大将をやっつけてもらう。
それから、いじめっ子たちは、ガキ大将から離れ、良一のいうことをきくようになる。そのなかには、岩崎専務の坊ちゃん・太郎(加藤清一)もいた。
ある日、良一と啓二は、帰宅する父が、専務のクルマから降りて、ペコペコ頭を下げる姿を目撃する。
おれたちは、専務の子どもを家来にしているのに、偉いはずのおとうちゃんが、なぜあんなペコペコするのか・・・良一と啓二のなかに父への疑問がひろがっていく。
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賢い兄・良一と兄のまねっこの弟・啓二のコンビがおもしろい。とくに啓二を演じる突貫小僧は、小津のお気にいり。顔がぶさいくで、そこにいるだけで笑ってしまう。
突貫小僧は、その後も小津作品に登場していく。
昭和7年、東京の郊外にひろがる田園風景。電車が通っていく。池上線だという。
やさしいおかあちゃんを演じるのは、吉川満子。黙ってニコニコ子どもたちを見ているけれど、おとうちゃんに怒られると、庇(かば)う。
おとなの繪本とあるように、喜劇だが、サラリーマンの悲哀をテーマにしている。
ぜひ、活弁入りで見てください。