かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

小津安二郎監督の無声映画『大人の見る繪本:生まれてはみたけれど』(昭和7年)を見る。

f:id:beatle001:20210202171846j:plain




Amazonプライムの動画配信で、小津安二郎監督『大人の見る繪本:生まれてはみたけれど』(1932《昭和7》年)を見る。


脚本は、ゼェームス槇こと小津安二郎
活弁は、松田春翆(二代目)



父の健之介斎藤達雄は、会社では、専務・岩崎(坂本武)のお気にいりだ。


そのせいあって、とうとう健之介は、岩崎専務近くの、東京郊外に自分の家を建て、引っ越してくる。


健之介は、自分でもトントン拍子の出世がうれしく、長男・良一(菅原秀雄)と次男・啓二(突貫小僧)には、「うんと勉強して偉くなれ!(おとうちゃんのように)」と鼻高々にいう。


しかし、転校したばっかりの良一と啓二は、学校へ行くといじめられる。


ふたりは、家を出ると学校へいかないで、弁当だけ食べて家(うち)へ帰る。


担任教師が、家にやってきて、ふたりの不登校がわかってしまう。父・健之介に叱られる良一と啓二。


しかし、賢い良一は、家へ出入りする酒屋のお兄さんと取引して、背の大きいガキ大将をやっつけてもらう。


それから、いじめっ子たちは、ガキ大将から離れ、良一のいうことをきくようになる。そのなかには、岩崎専務の坊ちゃん・太郎(加藤清一)もいた。


ある日、良一と啓二は、帰宅する父が、専務のクルマから降りて、ペコペコ頭を下げる姿を目撃する。


おれたちは、専務の子どもを家来にしているのに、偉いはずのおとうちゃんが、なぜあんなペコペコするのか・・・良一と啓二のなかに父への疑問がひろがっていく。



賢い兄・良一と兄のまねっこの弟・啓二のコンビがおもしろい。とくに啓二を演じる突貫小僧は、小津のお気にいり。顔がぶさいくで、そこにいるだけで笑ってしまう。


突貫小僧は、その後も小津作品に登場していく。


昭和7年、東京の郊外にひろがる田園風景。電車が通っていく。池上線だという。


やさしいおかあちゃんを演じるのは、吉川満子。黙ってニコニコ子どもたちを見ているけれど、おとうちゃんに怒られると、庇(かば)う。


おとなの繪本とあるように、喜劇だが、サラリーマンの悲哀をテーマにしている。


ぜひ、活弁入りで見てください。