かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

静かで濃密な傑作映画『モロッコ、彼女たちの朝』を見る(8月18日)。

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アブラ(左)とサミア。『モロッコ、彼女たちの朝』。1枚の絵を見ているようなシーンが多い。




8月18日(水)、炎暑。


日比谷の「TOHOシネマズシャンテ」へ、マリヤム・トゥザニ監督『モロッコ、彼女たちの朝』(2019年製作。モロッコ・フランス・ベルギー合作)を見にいく。



電車で、木内昇『笑い三年、泣き三月』を読む。


戦後まもなくの浅草。オリオン座という小屋。笑いを極めようとする漫談芸人や裸(下着は着てるが)のダンサーたちの話。 戦後の浅草のようすがていねいに描かれている。




TOHOシネマズシャンテ、12時10分より『 モロッコ、彼女たちの朝』


静かで濃密な映画。予告編を見てください。わたしは、予告編に誘われ、見にいきましたので(笑)。




www.youtube.com



臨月のお腹を抱えてカサブランカの路地をさまようサミア。イスラーム社会では未婚の母はタブーとされ、美容師の仕事も住居も失ってしまった。ある日、彼女は小さなパン屋を営むアブラと出会い、彼女の家に招き入れられる。アブラは夫を事故で亡くし、幼い娘との生活を守るため心を閉ざして働き続けていた。パン作りが得意でおしゃれなサミアの存在は、孤独だった母子の日々に光を灯す。




(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/92507/


大きなお腹をしたサミアが、仕事と宿を探して、その町の一軒一軒のドアを叩くが、断られる。未婚の母は、モロッコではタブーだった。かかわりあうとまきぞえをくう。誰も相手にしてくれない。


もうひとりの主役・アブラは、夫を事故で失い、幼い娘とふたりでギリギリ暮らしている。心を閉ざして笑うことがない。


サミアは、アブラのドアも叩くが、断られる。サミアは心身ともに疲れ、路上にすわりこむ。


一度は断ったアブラだったが、どこも行くアテのないサミアを見かねて、「今夜だけよ」と泊める。顔は厳しいが、心のやさしいことが見ているわたしたちにもわかってくる。


このふたりの触れ合いを、映画は、じっくり描いていく。サミアを妊娠させた相手も出てこないし、アブラの夫の事故の回想もない。説明はいっさい抜き。「現在形」で話が進む。


特別な話の展開はなく、サミアとアブラの心の動きがとらえられていく。それだけで、見応えのある映画になっている。


それと、予告編に出てくるアブラの幼い娘がかわいい


サミアとアブラの荒んだ心を修復していくうえで、この幼い娘の天真爛漫なやさしさが欠かせない。それだけでなく、つらい映画のなかで、観客の心も癒してくれる。


大作映画に飽きているひとにおすすめしたい作品だけれど、上映館が少ないのが残念。



日比谷、有楽町周辺でお酒を飲めそうな店を探したがみつからず、そのままアパートへ帰る。