かぶとむし日記

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村上春樹原作、濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』〜ダニー・ハリスンの音楽。

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9月1日(水)。



イオンシネマ板橋」へ、村上春樹原作、濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』を見にいく。


濱口竜介は、5時間17分というびっくりするほど長時間の映画『ハッピーアワー』(2015年)の監督。しかし、この映画、長いだけでなく、内容もおもしろかった。濱口監督作品を見るのは、それ以来。


舞台俳優で演出家の家福悠介は、脚本家の妻・音と幸せに暮らしていた。しかし、妻はある秘密を残したまま他界してしまう。2年後、喪失感を抱えながら生きていた彼は、演劇祭で演出を担当することになり、愛車のサーブで広島へ向かう。そこで出会った寡黙な専属ドライバーのみさきと過ごす中で、家福はそれまで目を背けていたあることに気づかされていく。




(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/94037/


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原作は、新しく雇った無口の女性運転手(三浦透子と、西島秀俊演じる主人公・家福(かふく)のクルマのなかの会話を中心に進行していく、村上春樹の短編(『女のいない男たち』に収録)は建て付けがシンプル。映画は、基本ストーリーに肉づけをして、3時間近い作品になっていた。






美しい女優だった家福の妻(霧島れいかが急死する。


生前、夫婦の仲はよかったが、家福は、妻が複数の男性と性的な関係をもっていることを知っていた。しかし、家福は妻にそのことをいい出せないまま、妻が亡くなってしまう。


家福は、妻を愛していた。妻の男性関係を知ってからも、それは変わらなかった。


妻も家福を愛してくれていたはず。なのに、なぜ他の男性たちと関係をもっていたのか、家福が腑におちないまま、妻はひとりで逝ってしまった。


寡黙な女性運転手・みさき(三浦透子を雇う。家福は、移動するとき、運転するみさきと長い時間クルマのなかで過ごすようになる。


家福は、ほとんど感情をあらわさないみさきに、落ち着きどころのない自分の気持ちを、少しずつ話していくようになる。みさきは余分な口をはさまないので、ひとりで壁に向かって話しているようでもある。それがよかった。


家福の職業は、舞台俳優で演出家。


チェーホフ『ワーニャ伯父さん』を舞台にかけるため、オーディションで合格した役者を集めてリハーサルを繰り返す。


この部分は原作にない映画の見どころになっている。


舞台の応募にやってきた青年・高槻(岡田将生は、亡くなった家福の妻を知っているという。高槻は家福の妻の熱烈なファンだった。


高槻は、「奥さんのことを話したい」と家福を飲みに誘う。家福は、高槻も、生前妻が関係していた男のひとりであることを直感する。


映画としてはおもしろかったが、わたしのような凡庸なものには、夫を愛しながら、ほかの複数の男性と関係をもつ、家福の妻の心情=生理が、わからない。


だから家福がそうであるように、わたしも彼の妻の行動が腑に落ちないままだった(家福は、映画的にはなっとくのいく答えをみつけたようでもあるが、わたしにはそれが観念的でよくわからない)。原作も不透明だった。


でも、小説も映画も、ものごとを全部解明する必要はないとおもうので、それが作品の欠点とは感じなかった。


終盤、運転手のみさきにも、ある秘密があって、ふたりは、それぞれひとりで抱えてきた傷を、癒しあう(男女の関係になる、という意味ではなくて)。


『ドライブ・マイ・カー』は、上映時間、2時間59分。退屈しないで見られたが、家福とみさきが感情を露わにする後半になって、残り時間が気になった。つまりは少し長いなと感じられた。







夜、少し酔いながら、ダニー・ハリスンの音楽を聴く。空間を浮遊しているようなサウンドが好き。




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ダニー・ハリスンのサウンド、心地いい。

 




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こちらはビートルズ「フォー・ユー・ブルー」のカバー。