もう見てからずいぶん時間が経ってしまったので、備忘録として簡単に記録しておきます。
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11月23日、㈬。
「イオンシネマ板橋」(映画館)で妻と待ち合わせ、妻夫木聡と安藤サクラが共演する『ある男』(石川慶監督)を見る。
ねらいは主演のふたり。妻も同じ。
妻夫木聡の、前へ出過ぎない受けの演技が好き。
川本三郎原作、山下敦弘(やました・のぶひろ)監督『マイ・バック・ページ』(2011年公開)では、1960年代、取材の過程で、殺人を犯した学生運動家たちの証拠品を隠蔽したことになってしまう、雑誌記者を演じた。原作は川本三郎さんの自伝的エッセイ。川本三郎氏は、この事件で、朝日新聞を懲戒解雇になっている。
映画の妻夫木聡は、わたしのイメージする川本三郎氏そのままだった。川本三郎氏本人は、恥ずかしいけど映画を見て泣いた、と書いている。
それ以来、妻夫木聡の出演作はたのしみにしている。
この映画でも「在日朝鮮人」の人権派弁護士という複雑な役柄を、抑制的に演じていた。
事件に関係する男(柄本明)に話を聞くため、刑務所へいく。
予測できない演技で迫る柄本明の怪異ぶりと、静かにそれを受ける妻夫木聡の対比と緊張がおもしろかった。
そうそうこれはわたしだけかもしれないけど、ジョナサン・デミ監督の『羊たちの沈黙』(1991年)を思い出した。
牢獄の外と内で対面する食人鬼・アンソニー・ホプキンスとFBIの訓練生・ジョディ・フォスターの「面会」の緊張感あふれるシーン。
『ある男』は、『羊たちの沈黙』ほどではないけど、なかなか刺激的だった。
安藤サクラの安定した演技は、ときどきわたしのなかで寺島しのぶと混同するときがある。なぜだかうまく説明できないけど。
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11月26日、㈯。
妻の運転で、「ウニクス南古谷」へ、廣木隆一監督の『母性』(戸田恵梨香、永野芽郁主演)を見にいく。
自分の娘(永野芽郁)より母(大地真央)を愛する女性を戸田恵梨香が熱演する。
母の愛情を確信できない娘を演じるのは永野芽郁。この女優の頼りない表情が、好き。
家も喪失。
夫の母(義母)の離れを借りて住むことになる。
この義母がウソだろ、とおもうほどひどい。鬼母を演じるのは高畑淳子。
この女優はいつも直球の演技だから迫力はあるが、微妙なアヤがない。苦手な役者である。
義母は、戸田恵梨香を使用人のようにイビる。いや、使用人でもこんな扱いを受けたらすぐやめるだろう。
今どきこんな嫁いじめってあるの?
それにしても、なぜ戸田恵梨香と夫は、義母の家を出ないのか、わたしの感覚ではわからない。
夫は影絵のように存在感のない人で、妻の苦境を助けようとする様子もない。この夫の心がまったく理解できない。
力作だし、見ているとおもしろかったが、共感は感じられなかった。