3月25日㈯。雨。
「新宿ピカデリー」へ、内山雄人(うちやま・ゆうと)監督『妖怪の孫』を見にいく。
「新聞記者」などを手がけた映画製作会社スターサンズと「パンケーキを毒見する」の内山雄人監督がタッグを組み、“日本の真の影”に切り込んだ政治ドキュメンタリー。
連続在任日数2822日を誇り歴代最長在任総理大臣となった故・安倍晋三。タカ派的な外交政策と「アベノミクス」に代表される経済政策で支持を集めた反面、物議を醸す言動やスキャンダルでも世間から注目された。そんな安倍元総理の母方の祖父である政治家・岸信介は、社会の表と裏を渡り歩いて政財界を操る実力者としての姿から「昭和の妖怪」と呼ばれた。
(「映画.com」より)
★
これらの、社会的テーマというか、「政治の闇」に切り込む映画を企画・立案したのが、映画製作会社「スターサンズ」の河村光庸(かわむら・みつのぶ)氏。
河村氏は、小劇場では、上映の妨害や中止に追い込まれる心配があるので、最初の『新聞記者』から、「新宿ピカデリー」のような大きな劇場で公開するようにした、という。映画は大ヒットした。
『新聞記者』は、あまり生々しい政治状況を描くより、ある程度一般性をもたせたほうがよい、と判断して、フィクション化。しかも、結末は現状とは重ならない、ボカした終わり方にした。
その後の2作は、ドキュメンタリー。
『i(アイ)ー新聞記者』は、東京新聞・望月衣塑子記者の取材を追ったドキュメンタリー。
『パンケーキを毒見する』は、当時の菅政権を素材にしている。
上級国民が、家のなかで、ぬくぬく暖房にあたりながら会食している。
外では雪が降り、家畜の羊が、寒さと空腹で、一匹一匹と倒れていくーーしかし、倒れた羊をあたたかい部屋にいれたり、食べ物を与えることはない。
そんな寓話的なアニメを混じえながら、国民の困窮を描いた。
★
ところが、映画が公開されてまもなく、菅義偉は、退陣に追い込まれ、ややタイミングを失した形になった。
さらには、河村光庸氏が、2022年6月11日に心不全で亡くなってしまう(72歳)。
★
河村光庸氏の残した企画を『パンケーキを毒見する』の監督・制作陣が、再び製作したのが、今回の『妖怪の孫』。
「東京裁判」では、「A級戦犯被疑者」となった「昭和の妖怪」・岸信介は、なぜか、その後不起訴になる。
ほかの「A級戦犯」が絞首刑となるなか、岸信介は、戦後を生き延び、おどろいたことに、総理大臣にまで昇りつめる。アメリカとのあいだに、何か密約でもあったのだろうか。
★
安倍晋三氏は、祖父の岸信介を尊敬していた。ふしぎなことに、アジア・太平洋戦争を批判し、非戦・平和主義を貫いた父方の祖父・安倍寛には触れることが少ない。
まともなら、人間として尊敬する対象が逆さまだろうに。
2022年7月8日。安倍氏が亡くなってからも「妖怪の呪い」は、その後の菅政権、岸田政権にも引き継がれ、いまなお国民を苦しめ続けている。
★
この呪いの行き着く先は「戦争への道」だ、と映画『妖怪の孫』はわたしたちに訴える。
わたしたちが、「仕方がない、仕方がない、仕方がない」と見て見ぬふりをしているうちに、「呪い」の軍靴が近づいてくる。
内山雄人監督は、最後に自分の子供の写真を映す。
戦争を、この子たちの時代に受け渡していいのか、と、自分自身を含め、わたしたちに問いかける。
客席は満員だった。映画が終わると、場内から拍手が起こった。わたしも拍手した。少なくも、この映画館にいるひとたちは、岸田政権をよしとしていない。
★
一貫して軍事費拡大の予算に抵抗する政党がある・・・。2分17秒。www.youtube.com