『本を綴る』。
10月24日㈭。
ひさしぶりに山手線へ乗って、Sさんと新宿へ出る。「K'sシネマ」で篠原哲雄監督の『本を綴る』を見るため。
「K’sシネマ」は、新宿駅東南口に近い単館系の映画館。
時間があったので、近くの喫茶店によって開映まで本を読む。この喫茶店は、分煙をしてないのでひさしぶりにタバコの煙を吸った。しかし、近くにあまり喫茶店はないし、あっても混んでいるので、煙りをがまんする。
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篠原哲雄監督『本を綴る』。
作家の一ノ関哲弘は小説が書けなくなり、全国の本屋を巡りながら、書評や本屋についてのコラムを書く仕事をしている。哲弘は旅先での出会いや友人との再会によって刺激と温かさに触れ、厳しさを痛感しながら自分が書けなくなった理由と向き合う。
(「映画.com」から)
インターネットで見た予告編が、叫んだり、大声で泣いたりしないので、静かな映画を期待して、新宿まで出かけていった。
静かなのは静かだった。
しかし、どうなんだろう。なんか最後までものたりない。だいたい本屋さんと古本屋さんの区別もないし、本を扱うひとはみんな善人ばかりだし、出版不況も考慮されていないし⋯。
これはメルフェンだから、といわれればそうなんだけれど、もう少し「実」が根底にないと、わたしはつまらない。
がっかりしたシーン。
スタンド・バーを経営する美しい着物の女性が出てくる。彼女の夫は何年か前、海で溺れる女の子を助けようとして、代わりに溺れて死んでしまった。
着物の女性が、夫の墓参りにいくと、助けられた少女とその母にバッタリ出あう。
なんという偶然?
こういう静かにすすむ作品に、都合よく偶然がはさまると、作品全体が安価に感じられてしまう、とおもった。
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10月26日㈯。
朝8時半から「月一」の南古谷病院で血液検査と検尿。Sさん、運転。終わって「吉野家」で、朝定食。
そのまま少し早いが「ウニクス南古谷」へ、曽利文彦監督の『八犬伝』を見にいく。
原作は、山田風太郎の『八犬伝』(大元は滝沢馬琴)。先日まで読んでいたが、1/3くらい読んでも興がのらないので、中断してしまった。もっとむかしに読んでいたらおもしろかったかもしれない。
山田風太郎の小説「八犬伝」を役所広司主演で映画化。里見家の呪いを解くため運命に引き寄せられた8人の剣士たちの戦いをダイナミックに活写する“虚構”パートと、その作者である江戸時代の作家・滝沢馬琴の創作の真髄に迫る“実話”パートを交錯させて描く。
(「映画.com」から)
妖怪と運命で引き寄せられた8剣士の戦い。つまらなくはないが、ハラハラドキドキしない。物語をうっすら知っているせいもあるかもしれない。
戯作者・滝沢馬琴(役所広司)と浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)----ふたりの天才同士が向かい合う心理的な「格闘」も、月並み以上に感じられなかった。
男優は、先のふたりだが、女優では、土屋太鳳、黒木華、栗山千明、河合優実。
今年大注目の河合優実は、これが撮影されたおよそ2年前(?)では、無個性な女性「浜路」の役で出ている。まだまだ現在の片鱗は感じられない。ここからの2年の飛躍がすごいのだ。
大きなスクリーンを飛び回る「動」の大作。以前は好きだったが、いまはもっと静かな映画の方に惹かれる。
Sさんの感想も「ふつう」で、もともとそれほど期待してなかった、という。