11月6日㈭。
朝、クルマで仕事へいくSさんに、映画館のある南古谷のショッピング・モールで降ろしてもらう。11時45分から白石和彌監督の『十一人の賊軍』を見るため。
午前9時から、コーヒーを飲むスペースのある本屋さんがあいていたので、そこで上映まで本を読む⋯。1時間30分ほど時間があった。
瀬戸内寂聴の『美は乱調にあり』を読む。伊藤野枝の伝記。紙の本で、なかなか進まない。
文庫本の字がちいさいので目が疲れ、長時間読み続けられない。この日も、途中から映画評論家・佐藤忠男の『映画館が学校だった わたしの青春記』(Kindle版)に切換える。
内容的には、どちらもおもしろい。寂聴さんの『美は乱調にあり』が紙の本しかないのが不便でしかたがない。
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『十一人の賊軍』
江戸幕府から明治政府へと政権が移りかわる中で起こった戊辰戦争を背景に、11人の罪人たちが藩の命令により決死の任に就く姿を描いた時代劇アクション。「日本侠客伝」「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる名脚本家の笠原和夫が残した幻のプロットを、「孤狼の血」「碁盤斬り」の白石和彌が監督、山田孝之と仲野太賀が主演を務めて映画化した。
1868年、江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜を擁する旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩を中心とする新政府軍(官軍)の間で争われた戊辰戦争。そのさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩(現在の新潟県新発田市)で繰り広げられた、同盟への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた11人の罪人が、新発田藩の命運を握る、ある砦を守る任に就き、壮絶な戦いに身を投じる姿を描く。
(「映画.com」から)
予告編は見ていたが、戦闘シーンばかり続くし、役者が大声で怒鳴ってばかりいるので見るつもりはなかった。
しかし、YouTubeの感想に興味をそそられた。2004年一番の傑作だ、と評価するひともいる。
山田孝之と仲野太賀という役者も悪くない、というより好きだ。映画はどうなんだろう?
急遽、見ることにした。
予想通り、戦闘に次ぐ戦闘で、刀とからだがぶつかるシーンは迫力がある。
新発田(しばた)藩は、同盟軍につくか、新政府軍につくか揺れていたが、同盟軍を欺くために、罪人10人を新政府軍と闘わせる。
戦(いくさ)に勝てば、罪を許し、解放するという条件だった。
しかし、新発田藩の家老(阿部サダヲ)は、もしお役目がすんでも、生き残っていれば処刑するつもりでいた。いわゆる「捨て石」である。
善人顔の阿部サダヲを、悪人の筆頭に据えているのがおもしろい。阿部サダヲが演じると、単なる悪人でない深みが出てくる。
10人の罪人は、新政府軍と壮絶な戦いを繰り広げるが、やがて新発田藩・家老の目論見を知る⋯。
迫力があるし、見応えがあった。
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わたしが活劇(時代劇)のおもしろさに目覚めたのは、黒澤明監督の『七人の侍』。この映画をはじめて見たときのショックといったらなかった。
池袋「文芸坐」の黒澤明特集。207分(3時間45分)を、スクリーンに釘付けで見た。
それまで日本映画を舐めていた。甘く見ていた。
それからだ。
黒澤明のほかに、溝口健二、小津安二郎、成瀬巳喜男など、日本映画の古典といわれる作品を、映画館が特集するたびに見にいった。
テレビが放映すれば見たし、レンタル・ビデオに在庫があれば、借りて見た。古い日本映画に夢中になった。
『十一人の賊軍』は、それほどには夢中になれなかったが、激しい戦闘シーンの連続に、『七人の侍』をはじめて見たときの興奮をおもいだした。