かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬巳喜男監督『晩菊』〜近藤富枝著『本郷菊富士ホテル』。

 

映画『晩菊』の杉村春子

 

12月14日㈯。
娘の夫の両親とわたしたち夫婦の4人で、昼食をともにする。


それから、ミミ(孫、10歳)のピアノ発表会を見にいく。


娘の話では、「練習しない子だから来てもしょうがないよ」といわれていたが、あちらの両親も来るというので、顔合わせがてら、ミミのピアノ演奏を聴きにいった。

 

わたしはクラシックを聴く素養がないのでよくわからないが、「下手ッピー」だというわりには「まあまあ様になっている」気がした。あくまで「まあまあ」付きだけれど(笑)。



夜、「アマゾン・プライム」(有料)で成瀬巳喜男監督の『晩菊』(1954年製作)をSさんと見る。わたしは以前映画館で見ていたが、Sさんは見たようだが忘れている、という。

 

一緒に見てみた。


舞台となっているのは、東京都文京区本郷3丁目菊坂の界隈。このへんは、入り組んだ狭い路地がある。ずっと以前散歩していてたのしかった(懐かしい!)。



元芸者の4人⋯⋯きん杉村春子)、たまえ(細川ちか子)、とみ望月優子)、のぶ沢村貞子)は、菊坂周辺に住んでいる。


「きん」は「男より金」で、身近なひとたちに金貸しをして、けっこう小金を貯めこんでいるようだ。この映画の主人公。


「たまえ」は、病弱でなかなか働きに出ても続かず、半分は家に布団を敷いて寝ている。「たまえ」の愛情と関心は、ひとり息子の(きよし)に注がれている。清は働いているようないないような頼りにならない息子。「たまえ」は、むかしの同僚である「きん」からたびたび生活資金を借りている。


「とみ」は、賭け事とお酒が好きだ。パチンコをやってはお金をすっている。いつも懐はピーピー泣いているが、性格が明るいので「なるようになる」とくよくよしていない。ひとり娘の幸子有馬稲子)にお金をせびろうとするが、拒否されることが多く、もっぱら「きん」に金を借りている。


4人のなかでは、夫婦で食堂をやっている「のぶ」が一番安定しているようだ。子供はいない。酒好きの「とよ」は、金がないときも、この食堂へいりびたってお酒を飲んでいる。

 

この4人を中心に物語が動いていく、といっても大きな変化はない。

 

「きん」が、昔の恋人(上原謙)が訪ねてくる、となってウキウキするが、目的が「お金を都合してくれないか」ということだ、とわかって、いきなり気持ちが冷えてしまう。


映画としては地味かもしれないが、演出が名匠・成瀬巳喜男監督であり、芸達者な4人の女優の組み合わせもあって、「金の切れ目が縁の切れ目」みたいなシビアなテーマだけれど、味わいはコミカルな映画になっている。原作は、林芙美子


以前菊坂界隈をブラブラ歩いているとき、5~6段ある石段のところに、「ここは『晩菊』のロケ地」みたいな立て看板を見て、旧知に出会えたようなうれしさを感じたことがある。



映画の舞台になっている「菊坂」の近く(文京区本郷)には、文士や画家などが次々滞在したことで知られる「本郷菊富士ホテル」があった


(「本郷菊富士ホテル」=1914年<大正3年>に創業〜1944年に営業終了)


大杉栄伊藤野枝も、ここへ滞在したことがあると知って、近藤富枝のノンフィクション『本郷菊富士ホテル』を読み出した。


これがおもしろい。


創業者・羽根田幸之助とその妻きくえが、家賃の支払いを溜め込んでも、厳しく取り立てをしない。だから、それをあてにして集まってくる滞在者もいる。


大杉栄伊藤野枝も、そのようだ(笑)。


そういうところへは、奇人・変人が集まるようで、近藤富枝の『本郷菊富士ホテル』は、「奇人・変人伝」として読んでもおもしろい。

 

このホテルに滞在した著名人を「ウィキペディア」からひろってみる。
宇野浩二
宇野千代
尾崎士郎
直木三十五
広津和郎
竹久夢二
谷崎潤一郎
宮本百合子
坂口安吾
大石七分
大杉栄
伊藤野枝
高田保
正宗白鳥
三木清
など


ノンフィクション『本郷菊富士ホテル』のほかに、瀬戸内寂聴さんが(「瀬戸内晴美」名義)、『鬼の栖』というタイトルで、「本郷菊富士ホテル」のさまざまな人間模様を描いている、と知った。


Amazonから中古本を取り寄せる。


伊藤野枝大杉栄からはじまり、その周辺の人々・出来事を、いま気ままに探索しています。