かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

現実と妄想の境界がはっきりしない〜老人の脳内の世界を描いた映画『敵』。

 

映画『敵』。瀧内公美長塚京三

 

1月18日㈯。晴れ
Sさんと「さいたま新都心」の「Movixさいたま」へ、吉田大八監督、長塚京三主演の『敵』を見にいく(埼京線京浜東北線)。

 

原作は筒井康隆。白黒映画。


 

予告編。

www.youtube.com

 

大学教授の職をリタイアし、妻には先立たれ、祖父の代から続く日本家屋にひとり暮らす、渡辺儀助77歳。毎朝決まった時間に起床し、料理は自分でつくり、衣類や使う文房具一つに至るまでを丹念に扱う。時には気の置けないわずかな友人と酒を酌み交わし、教え子を招いてディナーも振る舞う。この生活スタイルで預貯金があと何年持つかを計算しながら、日常は平和に過ぎていった。そんな穏やかな時間を過ごす儀助だったが、ある日、書斎のパソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてくる。

 


(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/102459/

 

 

前半は、渡辺儀助(長塚京三)の精密な日常生活の描写。


歯を磨き、歯間の掃除をする。わたしは料理のことを詳細に表現できないが、この元大学教授は、3食とも自分でつくるようだ。つくりあげてひとり満足そうに食べる。その食事のシーンがつづく。


原作を読んでいないので、どういう展開になるのかわからない。それが興味をひきつける。


儀助は、大学を退いてから約10年が経っているが、いまもたまに講演を引受け、短文を雑誌などに発表しているらしい。暮らしには困ってないようだ。


妻は亡くなり、子供はいない。しかし、寂しそうには見えない。独居生活を満喫しているようにみえる。


儀助は、大学ではフランス文学を教えていた。昔の教え子、鷹司靖子(瀧内公美)が訪ねてくる。独居生活の元教授には、うれしい訪問者だ(この瀧内公美がキレイ!)。

 

歓待し、得意の料理でもてなし、ふたりでワインを飲む。


初回の訪問のときだったか、2回目だったか、鷹司靖子はワインを飲みすぎ、ソファで眠ってしまう。目が覚めてから、儀助は泊まっていくようにすすめるが、靖子は、丁重にお礼をいいながら、帰っていく。


靖子は儀助の家へときどき訪ねてくるようになった。

 

女性でもうひとり登場するのは、バー(?)につとめる女子大生の菅井歩美(河合優実)。

 

儀助が元大学の先生と知って、「わたし、先生に教わりたかったなあ」と笑顔でいうが、儀助からお金を借りて、いなくなる⋯⋯。

 

儀助の世界にいつから妄想が忍びこんでくるようになったのだろうか。


パソコンの黒い画面に、何か文字が浮かんで、早い勢いで右から左へ流れていく。このへんからだろうか。わたしにはメッセージの文言が読みとれない。


儀助の夢に、ソファに寝ている鷹司靖子の姿が浮かんでくる。儀助がからだに触れようとすると、靖子の姿はない。老人の性欲が描かれる。


亡くなったはずの妻(黒沢あすか)が登場する。湯気の出た鍋ものを長い箸でかきまわしている。

 

ときどき妻はあらわれる。


印象的なシーンがある。正確なセリフを書けないのが残念だが、、、


儀助が「おれはフランス文学の研究者なのに、きみと一度もフランスにいったことがなかったな」という。


妻が「行きたかった。なぜ(連れていってくれなかったの)?」と訊く。


「フランス文学をやっていても、しゃべるのは自信がなかったんだよ」と儀助がいって苦笑する。へんにリアルな生者と死者の対話⋯。印象に残る。


「敵が攻めてくる。北から⋯」というメッセージがパソコン画面から発信されているようだが、目の悪いわたしにはその文字が読みとれない。


しかし、実際に家の周辺へ爆撃がはじまり、爆音と煙に包まれる。


近所に住む、犬の糞の掃除にうるさい老人が爆撃で死ぬ。老人に厳しく注意を受けた犬を連れた婦人も死ぬ。


儀助は、必死に家のなかへ逃げる⋯⋯。



昼飯がまだだったので、「日本海庄や」へ寄る。ひさしぶりに黒ホッピーを飲む。


Sさんは「カキフライ定食」を食べながら「映画、おもしろかった」といった。