5月2日(金)。【2日目】
ホテルの窓からすぐ近く海が見える。
朝から雨が降っていた。
バスに乗ると添乗員さんが「雨が降ってますが、お昼頃にはやむそうです」とマイクでいった。
遠くの方に、雲の切れ目があって、少しだけ青い空が見える。
Tochan(とっちゃん)が「雲が切れてるから、10時くらいにはやみそうだ」といった。Tochanの天気予報は昔から的中率が高い。
小豆島は、どこを走っていても右側か左側に海が伴走してくれる。海のない埼玉県に住むわたしたちは、それだけでうれしい。
「寒霞渓(かんかけい)」という山へバスで登った。道が細い。大型のバスは、車とすれちがうのもたいへんだとおもうが、うまいものだ。
車窓から見える下界の風景──空と海と山が雲だか靄だかに包まれて、水墨画を見るようだった。
山頂に到着するころすっかり晴れてきた。あと15分で10時。やっぱりTochanの予想はあたる(笑)。
山頂の展望スポットから晴れた風景を見渡した。
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ツアーバスが、映画『二十四の瞳』(1954年)に使われた校舎「岬の分教場」へ到着。
小学生の頃、木下恵介監督、高峰秀子主演の映画『二十四(にじゅうし)の瞳』(1954年)を見てから、大石先生(高峰秀子)は、わたしの憧れの女性(ひと)になった。
単純だから、中学に入ったころは「離れ島の先生になりたい」とおもったが、卒業するころには断念した。理由は簡単。学校の勉強が出来な過ぎたから(笑)。
今回のわたしの一番の目的はここだったが、滞在時間が20分だという。う〜む、短い!
時間の許す限り教室のひとつひとつを見て歩く。
海に囲まれた美しい風景のなかを、新しく赴任した大石先生が、颯爽と自転車に乗って、岬の分教場へ通う──そんな映画のシーンが頭に浮かぶ。
(ここから3枚はネットから拝借)
原作は壺井栄のフィクションだけれど、大石先生は、わたしのなかでは実在の女性(ひと)のように、小さな頃から心のなかへ住みついている。
ふだん「泣かせ映画は嫌い」と公言していて、予告編で、泣いたり大声出したり感情の露出が激しいシーンが多いと、その映画を見るのをやめてしまうことも少なくない。
なのに『二十四の瞳』は、別だった。なんど見ても泣かされてしまう。次にああくるとわかっていても感情の調整がきかなくなる。
滞在時間の20分間はすぐ経ってしまった。
残念なのは、つるひめさんが写真入りで紹介されていた「映画村」が、今回の立ち寄りコースに入っていないことだった。
団体ツアーは、移動は楽だけれど目的地を自由に選べない。便利な分、それは仕方がないとあきらる。
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「オリーブ園」は、TochanとSさんは案内役のガイドさんについていったが、わたしは坂道の登りは厳しいので下で待っていた。
小豆島から高松港まで船に乗り、そこからツアー・バスで道後温泉へ向かう。
道後温泉は、正岡子規と夏目漱石(「坊っちゃん」の舞台)の街。夕食前に3人で温泉街を散歩した。
6時ちょうどになると、カラクリ時計の中から「坊っちゃん」の登場人物が飛び出てくるらしいが、道に迷ったのでその時間に遅れてしまった。