8月28日(木)。晴れ。
午後ユーカ遊びに来る。
バリ島へ旅行したとき、ミーミがリスにひっかかれた。病原菌がからだに残らないように、母と上尾まで予防注射へいったので、ユーカひとりでわたしのところへ残った。
ユーカはSさんとスマホの「脳トレ」で遊んだり、Netflixでなにかアニメのようなものを見ていたりしていた。わたしは一室にはいって、夜更かしを補って、ほとんど昼寝。
午後6時頃、娘(母)とミーミが予防注射からもどってくる。
ユーカとSさんとわたしが、そのクルマに同乗して、254(川越街道)にある「日高屋」へ夕飯にいく。わたしはビールとラーメンと餃子。みんなそれぞれに頼む。
ユーカもミーミも顔が焼けている。
娘の一家4人は、1週間くらい前に広島へ行ってきた。
原爆資料館を見てきたが、背の高い外国人(西洋人)が多くて、あまりよく見えなかった、行列ができるくらい混んでいた、という。
2019年にSさんやわたしが行ったときは、ゆっくり見ることができた。混雑の原因は、夏休みだからか、円安だからか。
外国人が核兵器の恐ろしさを知るには、ひとりでも多く見てくれた方がいい、と思いながら、まだ背の伸び切ってないユーカとミーミには気の毒だった。
★
吉田修一の『国宝』上が読み終わった。どんどんおもしろくなってくる。人間と人間との関係が深く掘り下げられて、登場人物の脇役のひとりひとりが存在感を増してくる。
『国宝』下に入る前に、気分転換で佐藤愛子の短編集『ソクラテスの妻』を読み始める。
Sさんから薦められた。
★

表題作の「ソクラテスの妻」。
「ソクラテス」とは、小説の語り手である「妻」が夫をそう呼んでいる。
「ソクラテス」たちは──同人雑誌に毛が生えたようなものだが、小説家の卵が集まって「文学雑誌」を出している。
「ソクラテス」の家がその集まりの場所になっている。
彼らの理想は高く、大声で理論をぶつけあうが、雑誌は軌道にのってなくて、全員そろってお金がない。
食費も雑誌の経費も「後でまとめて払うから」とかいいながら、なしくずしに「ソクラテス」の家が負担している。
食い散らかし、飲みっぱなしで──誰一人片付けていく人がいない。
定時制高校の講師をやっている「ソクラテス」は、平気で彼らにお金を貸したり用立てたりしている。
が、そもそも彼が働いているのは2〜3日で、たいして収入もないのに気前だけはいい。
「ソクラテス」の家は、「質屋さん」が本業。夫の稼ぎはあてにしてないが、「ソクラテス」は、その家業の方でも、仲間には、安価な品物に多額のお金を提供してしまう。
「いいかげんにしろよ!」
「ソクラテスの妻」の、夫への怒りはピークに達している。
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そんなユーモア小説だが、Sさんがわたしに薦めたのは少し魂胆があった。
結婚当初、わたしたちが借りている六畳一間のアパートは、わたしの昔からの友達や、当時勤めていた本屋さんのアルバイト学生などが、とっかえひっかえお酒の勢いで泊まりにきていた。
夜更かしをして、お酒を飲み直す。今思うとなんだかわからないが、やたら議論のための議論をした。
3〜4人泊まればごろ寝しかない。
Sさんは、わたしひとりになると「あんなに人がいると眠れない。寝不足だから明日はひとりで帰ってきて」という。Sさんも翌日は仕事があった。
わたしは、そのときは「わかった」といい返事をするが、翌日になるとまた誰かと歌を歌いながら帰ってくる。
「人間疲れたらどんな状況でも眠れるよ」と、わたしはいった。
Sさんからすれば全く話にならない「クズ夫」。
★
佐藤愛子の小説「ソクラテスの妻」とは、状況はちがうし、来る人たちももっとマシだった(?)が、公務員の家庭で育ったSさんには、想像外の生活だった。
「『ソクラテスの妻』を読んだら、あの頃のことを思い出した」とSさんはいう。
「毎晩バカヤロー!──ときみを呪っていた頃を」
「なんでこんなアホと結婚したのか、と後悔の連続だった⋯⋯ひどい男だったな、おまえは」
そして、、、
「おまえも『ソクラテスの妻』を読んでみたら、あの頃のわたしの気持ちがわかると思うよ」と、いった。