
10月5日(日曜日)。
午後からSさんの運転で「ららぽーと富士見」へ、オダギリジョー監督の『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』を見にいく。
タイトルからして変だったけれど、監督がオダギリジョーなので「もしや」という期待も少しあった。
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2019年にオダギリジョーが初監督した『ある船頭の話』を見ている。主人公は、山村の川岸に住む初老の船頭(柄本明)。
町から来た人が向こう岸まで川を渡るには、船頭の漕ぐ小さな舟にのるより方法がない。いろいろな人が船頭の舟にのってくる。が、まもなく橋の工事が完成すれば、船頭の舟は不要になってしまう。不要になる日が間近だが、その日がくるまで船頭は淡々と舟を漕ぎ、人を運ぶ。
──人気俳優が勢いで初監督した、という映画ではなかった。あの恵まれたルックスからどうしてこんなうらさびれた発想が生まれるのか。
もうひとつ、今年の7月に見たのが映画『夏の砂の上』。オダギリジョーが主演のほかに、共同プロデュースもやっている。プロデュースに名を連ねたのは作品に共感したからだろう。
造船所の仕事を失い、妻にも見すてられ、坂の上のちいさな家でうずくまるように暮らす男をオダギリジョーが演じている。この映画も、うらぶれた味わいがあった。
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一方で、何をやるのかわからないのがオダギリジョーの魅力でもある。だから『THE オリバーな犬』の予告編を見て、これまでとはちがう「挑戦的な映画」だな、というのは予想できた。
しかし、どうだろう?
たしかに「挑戦的な映画」だったが、結論からいってつまらなかった。何を見せたいのか、最後までわからない。
前半──作り手はおもしろいかもしれないけど、見ているわたしはちっともおかしくなかった。作る側がはしゃぎ過ぎて、見る方が白けてしまう。犬のぬいぐるみに入ったオダギリジョーを見ても何も感興がわかない。スケベな犬で、若い女性が側にいると懐いてくる、という設定も、ありきたりな発想でつまらない。
後半──「不思議大好き」の展開になる。「オリバーな犬」は付け足し以上登場しなくなるが、それはそれでかまわない。だっておもしろくなかったから。ここからおもろしい展開になっていけば⋯⋯。
後半の主演は、永瀬正敏と佐藤浩市。二人とも味のある個性派俳優だ。
たこ焼き屋が並ぶアーケード商店街にドアがいくつも並んでいる。ドアの向こうには別の世界が広がる──これってよくある発想、よく見る設定ではないだろうか。既視感がある。想像力が既視感を突破してほしかった。
深津絵里がEGO-WRAPPINの「色彩のブルース」を歌う、と聞いていた。好きな歌なのでたのしみだったが、何度かのブツギリ──ちょっと残念。
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EGO-WRAPPIN「色彩のブルース」。