
10月18日(土曜日)。
午前Sさんの運転で「南古谷病院」へ行く。
血液検査の注射をして、50分ほど待機。「血液検査」の結果を、H医師から診断を受ける。毎月1回の定期検診。
「貧血ぎみの数字が出ているけど自覚症状がありますか?」
と聞かれ、「ありません」と答える。
結果、いままで利尿剤を毎朝2錠ずつ飲んでいたが、今回から3錠に増えた(全部で朝9錠、夕方2錠)。
映画館で終了までトイレに行かずにすむか不安が増す。
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11時40分から「ウニクス南古谷」で、大森立嗣(おおもり・たつし)監督の『おーい、応為(おうい)』を見る。
江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の弟子であり娘でもあった葛飾応為の人生を、長澤まさみ主演で描く。飯島虚心の 「葛飾北斎伝」(岩波文庫刊)と杉浦日向子 の「百日紅」(筑摩書房刊)を原作に、「日日是好日」「星の子」の大森立嗣が監督・脚本を務めた。
(「映画.com」から)
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天才・奇人・変人の北斎とその娘応為(おうい)の風変りな一代記。
北斎と応為は絵を描いているが、売れないのか売る気がないのか、ひどい貧乏を抜け出せない。が、抜け出そうとも思ってないようだ。
二人は身なりをかまわない。応為は若い女性なのに浮浪者の風体のままどこでも出歩く。
住んでいる長屋の部屋は乱雑を極め、散らかり放題。身の置き場がなくなると、荷車に荷物を積んで引越す──それをを繰り返す。
北斎と応為に、ちがいもある。
北斎は酒もキセルもやらないが、応為はたえず煙を吐いている。あれば酒も飲む。いける口のようだ。
応為は父の血をひき、絵の才能があるようだけれど、ことさらそれが映画のなかで強調されるわけでもなく、本人も、べつだん格別の努力もしない。どうでもかまわないという感じだ。
映画の趣旨が、「絵画にとりつかれた天才女流画家の話」──というのともちがう。そういう気負いが応為にはない。
ドラマティックな展開はないし、大きな事件も起こらない。
歳月は過ぎてゆき、天才・奇人・変人の北斎とその娘は老いていく。
北斎の死後、葛飾応為がどう生きて亡くなったのか不明だという。侘しいような清々しいようなふしぎな後味──淡々とした展開・終わり方でちょっとおもしろかった。こういうタッチ好きかもしれない。
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むかし中野孝次の『清貧の思想』という本を読んで、感銘を受けたことがある。
貧しいことを恥じる必要はない。むしろ日本には「清貧」を良しとしてきた伝統がある──中野孝次はそう語り、その実例をあげていた。
北斎・応為──この父娘の「貧乏一代記」は、果たして「清貧」といえるのかどうか、見終えてから考えてしまった。