10月1日、月曜日。晴れ。
昨夜の台風が通り過ぎて、きょうは晴天。ただJRの首都圏の電車が計画的に運休したので、朝までその余波で東京の交通事情は混雑が残っているようだ。
遠い映画館へいかず、アパート「第二極貧荘」のある「イオンシネマ板橋」へ、木村大作監督の『散り椿』を見にいくことにする。この時代劇には、好きな俳優がたくさん出ている。
1時間ほど早く着いたので、「コメダ珈琲」で、モーニングとコーヒーを注文。
紙の本で、吉田裕著『日本兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』を読む。
- 作者: 吉田裕
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/12/20
- メディア: 新書
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イデオロギー的に戦争を論じるのではなく、実際の戦場体験者の証言などをもとに、兵士たちが、戦場でどのような状況にあったかを、具体的に教えてくれる。
例えば、歯科医の不足が深刻だった。兵隊の7割〜8割が歯を悪くしている。戦場では、まともに歯のケアもできないからだ。しかし、歯痛に悩まされても、治療する医師も器具も薬もない。兵隊の多くが歯痛に苦しみ、あやしい民間療法が横行した、という。
また、戦争が激しくになるにつれ、死の恐怖をまえに、兵隊の精神疾患が一気に増加した。死ぬことに勇敢なものばかりではない。多くの新兵が死を恐れた。戦場で戦う前に、死の恐怖に耐えかねて、自殺するものや発狂するものが絶えなかった。
大義名分がどうであれ、戦争がどれほど人間に過酷なものを強いるか、想像を超える。
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享保15年。藩の不正を訴え出たために藩を追われた瓜生新兵衛。追放後も連れ添い続け、病に倒れた妻・篠は、死の床で最期の願いを新兵衛に託す。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/87159/
今も昔も、権力の不正を暴いたものは、逆恨みされ、地位を追われる。瓜生新兵衛は、不正を暴いたが、藩はそれを認めず、瓜生を藩から追放した。瓜生は、愛妻・篠を連れて、故郷を出る。
その以前のこと。剣道場の若者たち4人は、四天王とその腕前を賞賛された。
4人のなかの瓜生新兵衛(うりゅう・しんべえ)と榊原采女(さかぎばら・うねめ)は、篠(しの)という女性を愛した。篠を妻としたのは、新兵衛だったが、妻の遺品のなかに、榊原采女から妻に宛てた恋文を発見し、新兵衛は妻のほんとうの心がどこにあったかを疑いはじめる。
妻がほんとうに愛していたのは、自分ではなかったのか?
妻の遺言は、追われた故郷へもどって散り椿をわたしの代わりに見てほしい、という望みと、苦境にいる榊原采女を助けてほしい、というものだった。新兵衛は妻の遺言を心に秘め、かつて藩から追放された故郷へもどっていく。
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俳優がよかった。主演の瓜生新兵衛を、岡田准一、妻の篠を麻生久美子、榊原采女を、西島秀俊。また篠の妹でひそかに新兵衛を慕う里美に、黒木華(くろき・はる)。
監督の木村大作は、もともとカメラマン。撮影も、木村大作がやっている。全編ロケで、映像の美しさが冴えている。
脚本の小泉堯史(こいずみ・たかし)は、長年黒澤明監督の助監督をつとめていたひと。黒澤監督が亡くなったあと、『雨あがる』(2000年)で監督デビュー。『阿弥陀堂だより』(2002年)、『博士の愛した数式』(2006年)、『蜩ノ記』(2014年)など、静かで美しい作品を撮っている。どれも、おとなの気品をひめた秀作。その小泉堯史の脚本ということも、この映画に風格を与えている。
迫力のある刀と刀のぶつかりあいには、岡田准一本人も指導側にはいっている。実際に、見ていてすごくリアルだ。
妻の心はどこにあったのか? 悩む新兵衛の心中をおもいやり、彼に寄り添う黒木華の演技も美しい。ひさしぶりに見た時代劇だったけど、みごたえがあった。
麻生久美子、黒木華の弟に池松壮亮、悪役に奥田瑛二など、みんな自然で落ち着いたいい味をだしている。
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帰り、中華の「日高屋」へ寄って、ホッピーと緑茶ハイを飲んで、アパート「第二極貧荘」へ帰る。