【大体の内容】
父さん(羽場裕一)の自殺未遂から、中原家はゆっくりと壊れはじめる。母(石田ゆり子)は家を出て、小さなアパートを借り、通いの母さんになる。父さんは教師の仕事をやめる。
さらに、映画の冒頭……
父さんは朝食の席で、「父さんは父さんを辞めようと思う」と子どもたちの前で静かに宣言する。
高校受験を控えた佐和子(北乃きい)は、そんな家庭の異変のなかでも、しっかりと毎日を生き、志望の進学校へ合格していく。
佐和子のこころをさわやかに支えるのは、転校生の大浦勉学(勝地涼)。
佐和子は、大浦の思いがけない問いかけに、「へ?」と戸惑うが、大浦は、なにか話しかけると、「おう」と力強く受けこたえてくれる。佐和子は、その「おう」がここちよいとおもう。
「へ?」と「おう」のカップルが生まれる(笑)。
壊れそうな家庭のなかで、佐和子も兄(平岡裕太)も壊れない。
佐和子がしっかり生きていくうちに、やがて母は、アパートを引き上げて帰ってくる。父さんは、また父さんに戻る。中原家の異変は終息していくのだが……(あとはネタばれになるので省略)
【感想】
主演の佐和子を演じる北乃きいがいいです。
原作も、たまたま読んでおりましたが、この作品は小説でも映画でも、魅力のおおもとは主人公の説明しがたい茫洋とした個性にあるとおもいます。その個性は輪郭がぼんやりしているので、とってもわかりにくい。それを、北乃きいという若い女優は的確に演じているとおもいました。
だから、けっしてつまらなくない。気の効いた青春映画だとおもいます。
しかし、瀬尾まいこのなかでも、とりわけ小技の目立つこの原作。ぼくは、その技巧が眼について、この原作を好きになれませんでした。同じ瀬尾まいこの作品でも、「図書館の神様」のほうがずっと作為がなくて好きです。
結局は、家庭の平和がもどってくることは、スタートしたところから見えています。つまり「予定調和」です。
どちらかといえば、成功した映画化だとおもいますが、わたしはそんわけでもう1つ感心しきれませんでした。
【追記】:原作の感想は、こちら。
(ギンレイホールにて)