新藤兼人監督がつくったインタビュー構成による溝口健二監督の映画です。この作品を見るのは2度目ですけど、やっぱりおもしろかったです。以前見たときは、まだここでインタビューに登場してくる人たちも若くてお元気だったとおもいますが、制作から31年経って今見ると、亡くなられた方もおおく、郷愁のようなものを感じました。
この映画の取材に応えている方(俳優のみ)を箇条書きしてみます。俳優以外でも、カメラの宮川一夫、シナリオ・ライターの依田義賢、その他溝口映画に携わった裏方さんまで、新藤兼人監督は詳細にインタビューしております。
- 映画のインタビューに登場する俳優たち
田中絹代、木暮実千代、京マチ子、香川京子、若尾文子、山路ふみ子、浦辺粂子、乙羽信子、山田五十鈴、森赫子、入江たか子、中野英治、中村鴈治郎、柳永二郎、進藤英太郎、小沢栄太郎
【注】:「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」を参照しました。
ひとりの人間としてもバランスのとれていた小津安二郎、若い頃から強い信念をもって映画に取り組んでいた黒澤明、職人のように端然と映画をつくっていた成瀬巳喜男と比べると、溝口健二は、つかみがたいおかしな魅力をもった人物像がこの映画から立ち昇ってまいります。取材に応えるみなさん、笑いながら、その厳しさ、性格の可笑しさを回想していますが、愛情ある回顧であることはまちがいありません。
登場する俳優の若い表情を見るだけでも楽しいですが、彼らの話から浮かびあがる溝口健二という人物に、ますます興味がわいてまいります。
とりわけ「溝口さんはあなたをお好きだったのではありませんか」と新藤兼人に尋ねられて、「先生がお好きだったのは、役の中のわたしであって、わたし自身ではありません」とキッパリ否定する、毅然とした田中絹代が印象に残りました。しかし、田中絹代はそうでも、他の人たちは、「溝口さんは、田中さんがまちがいなく好きだったんですよ」という声が有力。
以前同タイトルの、新藤兼人が書いた新書版も読んだことがありました。映画はインタビュー構成ですが、本は伝記風に書かれていて、とてもおもしろかったという記憶があります。