●映画のストーリー
時代は、戦国時代。町も村も戦闘がたえない。陶器家の源十郎(森雅之)は、ある城下で美しい姫若狭(わかさ=京マチ子)と遭遇し、妻子を捨てたまま、彼女のとりこになる。彼女に溺れていると、ある日、たまたま通りですれ違った僧侶から「おぬしは、なにか悪霊のようなものに憑かれている」といわれ、若狭が死霊であることに気づく。
「一緒にわたしの国で幸せに暮らしましょう」とせがむ若狭の死霊を払いのけて、源十郎は妻子のいる村へもどる。戦乱の舞台になって村は荒れ果てていたが、妻の若木(田中絹代)も、息子の源市も、元気だった。
しかし、源十郎が疲れ果てたまま眠り、翌日目覚めると若木は亡霊だったことがわかる。彼の息子源市だけは生きていた。
ringoさんやtougyouさんのお話で、宮川一夫の撮影した映像がいいということはお聞きしていましたが、全編美しい墨絵を見ているような美しさ。戦国時代の村や町がみごとに再現されていると思えば、川を舟で渡る幻想的なシーンがすばらしい。
京マチ子演じる若狭(わかさ)の美しさに、源十郎(森雅之)は溺れますが、この京マチ子は、眉を剃り能面のおかめそのまま、美しいどころか、凄い妖気が漂っています。
画面の隅から隅まで、緊迫したモノクロ映像と重厚な人物描写に、惹きこまれました。改めて溝口作品に陶酔。
【注】:ringoさんも、ブログでこの作品をアップしております。こちらもご覧になってください。