同名の作品が、1962年に田中絹代監督でも撮られているようですが、残念ながら見ていません。
【あらすじ】
天下統一をなした豊臣秀吉は朝鮮・明への侵略を意図するが、千利休は反対。次第に秀吉は利休への反感を強めていく。
利休の息女(実父は松永弾正だが、詳細は省く)お吟は、小さなころにいいなずけの約束があった高山右近を一心に愛している。その婚約が実父松永弾正の死によってこわれても、吟の右近への愛情は変わらない。
高山右近は吟のこころを知っていたが、すでに妻子があり、強いキリシタン信仰があるため、吟の愛情を受けいれることができない。吟は、父利休のすすめもあって、やむなく堺の商人に嫁ぐが<こころ、ここにあらず>で、離縁される。
ある日、豊臣秀吉は吟をみそめ、側室のひとりに加えようとするが、吟はこれを強く拒む。利休は、改めて強い吟の右近への愛情を知る。利休は、キリシタン禁制で島流しにされる右近のもとへ吟をやろうとするが、すでに利休の屋敷は秀吉の軍勢に包囲され、吟は自害して果てる。愛に殉じたお吟にとって、覚悟の上の死であった。
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丁寧に描かれた戦国絵巻。利休の息女を主人公にした視点が、男性中心の戦国ものにはない繊細さを感じさせてくれました。
お吟を演じる中野良子がいいです。いままで中野良子の映画って見たことがありませんでしたが、これ1本でファンになってしまいそうです。
見ていると少女のようにあどけない顔なのに、高山右近へのまっすぐな愛情を貫きます。そのためには、権力者秀吉の要求も拒む。これほど愛されたら男冥利に尽きるところですが、高山右近にとって大切なのは、女性の愛よりも、神に捧げる愛……というわけで、堅物右近に積極的に愛を告白するお吟がなんともいじらしい、、、
中野良子の着物姿を見ているだけでもたのしい映画ですが、千利休を演じる志村喬が、やたらシブい(笑)。ただ、どうも三船敏郎の豊臣秀吉は、役の特別な工夫もなく、いつものあのセリフと動き。最後まで違和感が消えませんでした。
★池袋「新文芸座」にて