4月7日土曜日の朝、雨はまだたいしたことなかったが、ときおり強い風が吹いている。空はあやしい色で、不規則に黒くよどんでいた。
この日の関東地方は、夜から明日の午前中にかけて激しい暴風雨になると天気予報が警告していた。それで川越へ帰る前にアンソニー・ホプキンスが演じる「ヒチコック」を見るかどうか迷う。
やっぱり早く見たいので、9時40分の回をインターネットで2枚予約。「ワーナーマイカル板橋」で、家人と見る。
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映画は、仲良く話していた弟が、突然大きなシャベルを叩きおろして兄を殺す(逆だったか?)、というショッキングな場面ではじまる。これはテレビの「ヒチコック劇場」のある一話を再現した劇中劇だ、とまもなくわかる。意表を突くはじまりだ。この「カインとアベル」を素材にした兄弟のドラマ、むかしテレビで見た記憶がある。
映画の内容は、名作『サイコ』が誕生するまでの苦心に焦点があてられる。次々とサスペンスの傑作を生み出すヒチコックを漠然と天才監督としか見ていなかったが、実際に名作を創るのは、それほど簡単なことではなかったんだ、と、この映画で知る。
アンソニー・ホプキンスが、特殊メイクで顔もからだも太らせて、すっかりヒチコックになっていた。まずは、そのそっくりさんぶりにニンマリしてしまう。
存在感のあるアンソニー・ホプキンスのヒチコックぶりは、やっぱり見応え十分だが、すぐれた才能をもちながらつねにヒチコックの陰に隠れていることに不満も募らせている妻アルマ・レビルを演じるヘレン・ミレンもいい。名優ががっぷりと組んで、夫婦の確執の奥へメスをいれていく。
映画『サイコ』の撮影シーンも再現されるが、あの映画のジャネット・リーを演じるのがスカーレット・ヨハンソン。ひさしぶりに見るスカーレット・ヨナンソンが美しい。
映画をつくるために主演女優に恋をする・・・というヒチコック伝説も、この映画では踏襲されている。
この作品、これからどんな評価を得ていくのだろうか。わたしは、おもしろかった。