1月4日、木曜日。渋谷の「アップリンク」へ、フランソワ・オゾン監督・脚本の『婚約者の友人』を見にいく。2018年最初に見る映画。
早く着いたので、近くの喫茶「ヴェローチェ」で、5人の作家の短編を集めた『恋愛仮免中』を読む(電子書籍)。
収録されているのは、
5編とも、おもしろく読めた。はじめの目当ては、奥田英朗だったけれど、ほかの4編もよかった。全部をまとめたタイトルが『恋愛仮免中』だから、濃厚すぎるようなドロドロするようなものはなく、自分のむかしの忘れかけた感情を思い起こしてくれるような、いい意味で淡白な味わいの作品が並んでいた。
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フランソワ・オゾン監督の『婚約者の友人』は、期待以上によかった。クラシックな文体(スタイル)で、女性主人公・アンナと、戦死した友人(?)を訪ねてやってきたアドリアンの悲しみを深くとらえていた。
1919年、ドイツ。婚約者フランツをフランスとの戦いで亡くしたアンナは、フランツの両親と共に悲嘆に暮れる日々を送っていた。
ある日、アンナは見知らぬ男がフランツの墓に花を手向けて泣いているところを目撃する。アドリアンと名乗るその男は戦前のパリでフランツと知り合ったと話し、彼が語るフランツとの友情に、アンナもフランツの両親も癒やされていく。
アンナはアドリアンに次第に惹かれていくが、実はアドリアンはある秘密を抱えていた。
(「映画.com」から)
http://eiga.com/movie/87538/
白黒とカラーが、なんの不自然さもなくまじる、ちょっと変わった映像。貴重が白黒なので、むかしの名作を見ているような感覚もあるけれど、それがごく自然にカラー映像に移っていくのはいかにも現代の作品の味わい。
この映画で語られる戦争は、第一次世界大戦。これまで描かれてきた古典の名作を思わせるような美しい白黒映像。
回想と現在とかいうような明確な区別ではなく、ごく自然にカラー映像に移っていく。
前半は、戦死したフランツの友人というアドリアンの持っている謎めいた雰囲気がサスペンス的な興味をかりたてるけれど、その原因が明確になってから、この映画はさらに観客の感情を激しく突いてくる。
アンナが、アドリアンを探しにフランスへ行ってからの後半の哀しい展開は、ヴィットリオ・デシーカ監督の名作『ひまわり』(1970年公開、ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ主演)を思い起こさせる。あのときのソフィア・ローレンの深い哀しみの表情は忘れられないが、それを思い出してしまった。どちらも、戦争が運命を狂わしてしまった悲劇。
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戦争で夫を失ったアンナの表情は、いつも硬い。新しく現れたアドリアンへの複雑な感情。悩みと哀しみを抑えたアンナ(パウラ・ベーア)の美しさに魅了されてしまった。
この作品の魅力のひとつは、アンナを演じたパウラ・ベーアの硬質な美しさ。
『ひまわり』のヴィットリオ・デシーカ監督は、ソフィア・ローレンの心の動きを繊細に描いたが、この作品のフランソワ・オゾン監督も、パウラ・ベーアの清廉な美しさをめいっぱい引き出していた。
名作『ひまわり』のソフィア・ローレン。
『婚約者の友人』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=KxQ6skvDSbc
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帰りは、センター街の立食い寿司へ寄ってアパートへ帰る。