『戦雲(いくさふむ)』の1シーン。
3月16日㈯。晴れ。
「ポレポレ東中野」へ、三上智恵監督の『戦雲(いくさふむ)』を見にいく。1時間くらい早く着いたので、1階の喫茶室でコーヒーとカレー。ここのカレーは、キーマ・カレー。ボソボソしたカレーで、ふつうのカレーの方が好きだとわかった。
天畠大輔参議院議員(れいわ新選組)の『〈弱さ〉を〈強み〉に 突然複数の障がいをもった僕ができること 』( Kindle版)を、途中まで読む。
「あ・か・さ・た・な話法」によって、他者とコミュニケーションすることができるまでの想像に余りある苦労。しかし、それは他者との伝達手段の第一歩にすぎない。
介助者の協力なくして卒業論文も博士論文も書けないが、介助者が「一字一句」を書き留めていたのでは、時間がかかりすぎる。そこで介助者には、天畠大輔氏の伝えたいテーマを理解し、言葉を「先読み」する能力が求められる。
国会の質疑などで、介助者は「あ・か・さ・た・な話法」で、天畠議員に最初の2,3文字を確認し、その時点で「先読み」し、「----でいいですか?」と尋ねるシーンをよくみかける。そのことだろう。
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目をあげて喫茶室を見回したら、ひとつテーブルを挟んだ先の4人がけの席に、三上智恵監督がいた。
第1回目の上映のあとと、わたしが見る第2回上映のあとに舞台挨拶があるので、その合間にひと息いれている様子。4人のなかのひとりはパソコンをひらいて見ていた。
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「ポレポレ東中野」は、地下のロビーは狭いので、前の回の観客と、これから見るわたしたちとが、まざりあい、ごったがえしていた。そこに三上智恵さんのサイン会がひらかれているので、階段の片側に長い列ができている。
ネット予約した座席にすわって(いちばん前の席を予約していた)、場内を見てみると、ほとんど満席状態だった。これから時間ギリギリに駆けつけるひともいるだろうから、満席の初日上映だ。
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日米両政府の主導のもと、自衛隊ミサイル部隊の配備や弾薬庫の大増設、全島民避難計画など、急速な戦力配備が進められている南西諸島。2022年には台湾有事を想定した日米共同軍事演習「キーン・ソード 23」と安保三文書の内容から、九州から南西諸島を主戦場とする防衛計画が露わになった。
三上監督が2015年から8年間にわたり沖縄本島、与那国島、宮古島、石垣島、奄美大島などをめぐって取材を続け、迫り来る戦争の脅威に警鐘を鳴らすとともに、過酷な歴史と豊かな自然に育まれた島の人々のかけがえのない暮らしや祭りを鮮やかに映し出す。
(「映画.com」より)
島民と本土のひとたちの間には、厚い壁がある。危機感の落差が大きい。
生活のすぐ隣りに、弾薬庫が増設され、ミサイルが配備され、射撃訓練の銃声が鳴り響いたら、平穏な暮らしを維持するのはむずかしいだろう。
三上智恵監督は、これまでの映画で、辺野古や高江の、自衛隊と住民の対立を描いてきた(『沖縄スパイ戦史』はちがうが)。
しかし、どれだけ島民が反対しても、その意思は蹂躙(じゅうりん)され、新基地の工事はすすんでいく。
今回描かれたのは、島民と自衛隊との対立が中心ではない。
平和な島民の生活のなかへ、土足で侵食してくる武器・弾薬と自衛隊。
島が軍事要塞化していく。どうにもならない無力感…。
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上映後、三上智恵監督の舞台挨拶があった。足をケガしていた。杖をついて歩いてきたが、話をするときは杖にたよらず、自分の足で立っていた。
舞台挨拶の写真。
いつ戦闘が勃発するかもしれない恐怖のなかに、南西諸島の島民は置かれている。しかし、本土のひとたちに、島民の逼迫感(ひっぱくかん)がまったく伝わっていない。メディアはその現状や危機感を報道しない。
島民たちが、ミサイル攻撃を受け、最初の犠牲にされる。しかし、現代の戦争が、沖縄周辺だけで終わるはずがない。はじまってしまえば、軍事基地を中心に、日本全土が攻撃にさらされる。けっして他人事ではないはずだ…。
三上智恵さんの『戦雲(いくさふむ)』の著書も紹介された。映画とはだいぶ内容がちがうというので、映画館を出て、amazonからダウンロードする。
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【著者に訊く!】〜三上智恵『戦雲 (いくさふむ)』(映画と本について)。
www.youtube.com