かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

芝木好子の世界を堪能!〜『群青の湖』を読む。

3月19日㈫。晴れ。
午前、芝木好子著『群青の湖』を読了。






琵琶湖のほとりにひとり嫁いできた瑞子は、旧家の重みと夫の背信から、幼い櫻子をつれて生まれ育った四谷に戻る。かつて美しい染めや織りの技を競いあった仲間にむかえられ、瑞子は群青の湖の永遠の神秘を、その片鱗でもよいから1枚の布に止めたいと願うのだった。精魂をこめ格調高く織りあげた傑作長編。


(「講談社BOOK倶楽部」より)


電子書籍の欠点なのかどうかわからないが、読み出す前にこの本の厚さ、分量というのが実感でつかみにくい。一応読み終えるまでの時間が目安として出るし、◯◯%まで達しているか、という表示も出る。だから読む前にチェックしておけばなんてことないんだけど。


しばしば、読み出してから「◯◯%」が進まないので、これは長編だな、って気づく。


『群青の湖』も、かなりの長編ではないか、って、本の1/3くらいまで辿り着いて、気がついた(笑)。


しかし、退屈していたわけではない。芝木好子の硬質さと、情熱が同居する文章が、もともと好きなのだ。充実した長編を読むたのしさを堪能した。



時代背景は、いつだろう? 1960年代くらいか。


彼女が最初に嫁いだ由緒ある旧家は、いまの感覚では3日も居られないほどひどい扱いをする。結局瑞子は、夫の浮気に愛想をつかし、ちいさなひとり娘を連れて、生まれ故郷の東京四ツ谷へ戻って来る…。


染め物の芸術で競い合う仲間であり、ライバルである先輩、後輩との微妙な恋愛感情などもはさみ、「群青の湖」(琵琶湖)の美しい色彩をものにしようと情熱を燃やす主人公・瑞子の生き方が魅力的だ。


どうしたら、文章がここまであざやかに風景や色彩を写しとることできるのか。芝木好子の小説を読むと、描写力の力強さに、きめ細かさに、圧倒されてしまう。