8月4日、土曜日。「ポレポレ東中野」へ、三上智恵さんと大矢英代(おおや・はなよ)さんが共同で監督された『沖縄スパイ戦史』を見にいく。
「ポレポレ東中野」は、ネットであらかじめ座席を確保する、ということができない。上映より40分ほど早めに着いたが、すでに4、5人が並んでいた。10時から開場らしいけれど、暑いなか30分も並んで待つ根性がないので、すぐ隣の小さな珈琲屋さんに逃げこむ。
映画館がネットで予約できる時代になって、その恩恵を十二分に活用しているので、映画館へ並んで座席を確保する、というむかしはあたりまえだった努力がしんどい。で、なるたけ予約できる映画館へいくようにしているけれど、『沖縄スパイ戦史』は、東京ではこの「ポレポレ東中野」だけ。そういえば、前回「ポレポレ東中野」へきたときも、三上智恵監督の『標的の島 風かたか』(2017年)見るためだった。
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10時に映画館へもどったら長い列がでていたので、焦る。入場してやっと通路がわの席を確保できた。奥まった席は、トイレへ行きたくなったとき困るので、できれば避けたい。
次々入場者が続き、予告編を中止して、上映は10分遅れに。座席が足りなくなって、後方に補助席が用意される。公開から1週間目、盛況だ。
混んでいるのは、個人的にはいやだけれど、沖縄の問題に少なくもこの映画を見にきたひとたちは関心があるのだとおもうと、うれしくもなる。
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沖縄の現状を告発しつづける三上智恵さんの監督作品。
『標的の村』(2013年)
『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』(2015年)
『標的の島 風かたか』(2017年)
これまでの作品は、どれも沖縄が置かれている現状を描いていた。戦争で唯一、敵が上陸して地上戦を経験しなければならなかった沖縄。そのまま戦後も、アメリカ軍の基地の約70%が沖縄に集中している。
辺野古へ新しい基地をつくらせない、という闘いはいまも続いているが、わたしも含めて、日本全体で、そのことに関心がうすい。ひとごとのように「沖縄には悪いけど、防衛には基地が必要なんだからしかたがないよ」なんていう。
わたしも無関心だったけれど、三上智恵さんの映画を見るようになって、沖縄の置かれている厳しい現実を少しは理解できるようになった。
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今回の映画『沖縄スパイ戦史』は、これまでの基地の現状報告ではなく、沖縄の知られていない裏面史にスポットがあてられている。
第二次世界大戦末期、米軍が上陸し、民間人を含む20万人余りが死亡した沖縄戦。第32軍・牛島満司令官が自決する1945年6月23日までが「表の戦争」なら、北部ではゲリラ戦やスパイ戦など「裏の戦争が続いた。作戦に動員され、故郷の山に籠って米兵たちを翻弄したのは、まだ10代半ばの少年たち、彼らを「護郷隊」として組織し、秘密戦のスキルを仕込んだのが日本軍の特務機関、あの「陸軍中野学校」出身のエリート青年将校たちだった。
(パンフレットから)
少年たちも住民も、やってきた軍人さんたちをはじめは歓迎した。彼らは、颯爽として、かっこよかった。少年たちは、軍人さんたちに憧れた。
住民は、彼らがわれわれを守ってくれるのだとおもって、命令に従い、協力した。山・川の地形に詳しい10代半ばの少年たちをゲリラ兵に出すことにも協力した。少年たちは、銃を持ち、米兵と戦った。
しかし、きのうまで優しい日本兵たちは、戦況が悪くなると、一変して住民に銃を向けるようになる。
米兵に捕まり、こちらの地形や作戦を知られることを恐れたのだ。スパイ容疑の名のもとに、日本兵による住民の虐殺がはじまる。
軍のマニュアルには、住民を守れ、という指令はもともとなかった、ということが取材からわかってくる。日本政府は、はじめから住民を守るつもりはなく、「捨て石」として考えていたのだ。
少年ゲリラ兵、軍命による強制移住とマラリア地獄、やがて始まるスパイ虐殺・・・。戦後70年以上語られることのなかった「秘密戦」の数々が一本の線で繋がるとき、明らかになるのは過去の沖縄戦の全貌だけではない。
映画は、まさに今、南西諸島で進められている自衛隊増強とミサイル基地配備、さらに日本軍の残滓を孕んだままの「自衛隊法」や「野外令」「特定秘密保護法」の危険性へと深く切り込んでいく。
(パンフレットから)
今回の作品には、三上智恵さんに、若いジャーナリスト・大矢英代(おおや・はなよ)さんが加わっている。権力が好きな女性は多くみるけれど、権力を恐れず真実を追求していく女性は美しい。
左・三上智恵さん、右・大矢英代さん(パンフレットに掲載されているのと同じものをネットから借用しました)。
映画が終わると、客席から拍手が起こった。
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追伸:こちらで、三上智恵さんの撮影日記や関連動画を見ることができます。
追伸:こちらで大矢英代さんのインタビューを見ることができます。