かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

瀬尾まいこ「天国はまだ遠く」

天国はまだ遠く
先日「図書館の神様」を読んだらおもしろかったので、もう1冊これを読んでみた。やっぱりおもしろい。どちらともいえないくらいおもしろい。はっきり瀬尾まいこという作家を記憶した。女性作家でいえば、角田光代とこの瀬尾まいこが最近ではおもしろかった。

自殺を決心し、適当な山の奥の奥へやってきた女性主人公。睡眠薬を大量に飲むが、2日間ぐっすり眠りすっかり元気になってしまう(笑)。会社や日常でのいやなことは、ずっとむかしむかしの遠いことのようにおもえる。1泊1000円(格安。他に客はいない。なんでも約1年ぶりの客だという)の民宿での毎日がはじまる……。朝食をとると、海の見える山の中を散歩。人と会えば、淡々と挨拶を交わす。民宿は田村という青年がひとりでやっている。この田村青年は、両親が交通事故で亡くなったため、都会からこの村へもどってきたのだという。田村は、この村に同化したように、むさくるしいカッコのまま毎日よく働いている。

女性主人公は、田村に次第に好感をいだくが、はっきり恋愛感情と意識するわけではない。それがありきたりでなくていい。心の病んでいる人間なら、自然のなかに同化しているような人間に共感してもおかしくないだろう。

そんな自殺志願でやってきた女性の、村での21日間の生活を描いたもの。この著者には独特のおっとりしたユーモアがある。それは「図書館の神様」でも本著でも同じ。ぼくの好きな笑いだ。せせこましくないし、しつこくもない。なにか優雅な笑いだ。こういう笑いの種類は夏目漱石ももっている。この笑いに出会うためだけでも、瀬尾まいこの本をもっと読んでみたくなる。