かぶとむし日記

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オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督「ヒトラー 〜最後の12日間〜」

サイトでの解説は、このようになっています。

秘書ユンゲが目撃した、ヒトラーの最期の日々、ナチスの崩壊を描く本作。監督はデビュー作『es』で高い評価を得たオリヴァー・ヒルシュビーゲルだ。最大のタブーに触れた衝撃作は、ドイツアカデミー賞で3部門を受賞。興味深いのは、その中に観客賞受賞が含まれていることである。ドイツ人の手によって、ドイツ語でヒトラーの姿が描かれたことには大きな意義がある。悲劇を繰り返さないためにも、タブーを葬り去るだけではいられない時に来ているのだろう。ヒトラーの著作「わが闘争」は、今なお、ドイツでは発禁本となっている。そのドイツで、ヒトラーの最期を真正面から見据えた作品。

ヒトラーブルーノ・ガンツは、ベルリンの地下深い要塞に潜伏していますが、すでにドイツ軍の命令系統は崩壊し、軍の戦力は壊滅状態になっていました。

秘書の募集で雇われた女性ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララは、追い詰められ、憔悴したヒトラーの、最期の12日間を目撃します。

映画は、このユンゲの視点を通して描かれていきます。

周囲のひとたちに優しいヒトラーの一面と、思うようにならない戦況に苛立ち、部下の将軍たちを激しく怒鳴りまくる、恐ろしい彼の一面が、ユンゲのなかでは、なかなか1つに結晶しません。彼女にとって、ヒトラーは理解しにくい雇い主でした。

しかし、ユンゲは、ヒトラーと、彼の愛人(死の間際に結婚する)エヴァ・ブラウンへ、次第に同情をよせていきます。

至近距離から見るヒトラーは、何百万人のユダヤ人を虐殺した恐ろしい指導者ではなく、敗戦の色濃い、年老いた、孤独なドイツの最高指揮官でしかありません。

逃げ延びたユンゲが、ヒトラーの犯した恐ろしい犯罪の全貌を知るのは、戦後になってからでした。

ドラマらしい起伏をつくらず、抑制されたリアリズムで、ヒトラーの終焉を描いています。ブルーノ・ガンツは、恐ろしい独裁者ではなく、憔悴した敗軍の将としてのヒトラーをきめ細かく演じています。