ビートルズやジョン・レノンについてのドキュメンタリーや書物は数多いが、本作のように平和活動家としてのレノンにテーマを絞ったものは珍しいかもしれない。60年代から70年代初頭にかけて、反戦や人権を掲げた運動が世界中に広がったが、レノンもそうした状況に積極的に関わっていった。しかしレノンの平和活動は、時には活動家たちの広告塔として利用される危険性もはらんでいた。そのため、米政府の指示でFBIがレノン夫妻を尾行・盗聴するまでになる。そんな状況は、現在のブッシュ政権にもオーバーラップするだろう。音楽ファンには、「ジョン・シンクレア支援コンサート」など、貴重な映像も見ものだ。
★(「goo映画」解説より)
六本木の映画館で見てきました。すでにいくつかの記事や情報を見ていたので、予想通りの映画だなあ、という感じです。70年代のジョン・レノンを見てきたものには、この映画から新しく発見されるものは特にありませんでした。
テレビ出演やニュースから、ジョンの60年代後半〜70年代はじめ、もっとも反戦活動が激しかった時代を、集めています。映像はニュースなどから集めたものを大きなスクリーンで見るから、かなり粗いです。
ジョン・レノンの反戦活動は詩人のもので、活動家・思想家のものではなかった、いろいろ滑稽なアイディアをやるけれども、どこかひとりよがりでリアリティがなく、例えばジョンは、戦場へ赴いて、兵士たちの声に耳を傾けるわけでもなかった。
戦場の兵士たちに、ジョンとヨーコの奇矯な平和活動は、どのように映ったのか?
そんな実効性のない活動でも、ジョンのカリスマ性と大変な集客力から、急進的な左翼思想家に利用されたら恐ろしい力になるだろう、それをニクソン大統領のアメリカ政府が恐れた(そこで盗聴や尾行までやってしまうアメリカがすごいですが)……簡単にいってしまうと、ジョンの反戦活動とはそういうものではなかったか、とぼくはおもっています。だから、アメリカの永住権を手にすると、一気にジョンの反戦活動は衰退してしまいます。
「愛と平和の使者=ジョン・レノン」のテーマに、この映画の監修者が熱心にかかわったことは、想像できます。しかし、ジョンの反戦活動の中身は、やっぱりこの映画を見ても、はっきりしませんでした。どこか茫漠として、「イマジン」のように夢想の中にあるような気がします。
しかし、果敢に発言するジョンの映像をたくさん見られたのは、ファンとしてはたのしかったです。切り返す言葉の鋭さ、しかし、そこにちょっとだけユーモアをまぜることを忘れない。これがジョン・レノンです。
この映画ではじめて見る未公開映像はありませんでした。
ライヴ映像では「ジョン・シンクレア」を歌うシーンがあります。これはあまり一般に出回っていないかもしれませんが、未公開ではないので、そういう意味では、「goo映画」の解説の「『ジョン・シンクレア支援コンサート』など、貴重な映像も見ものだ」というのは、半分適当ではないようにおもいます。