上映時間、3時間22分というので、仕事明けの眠い日にいっても通して見られないだろうと、あらかじめ睡眠をとってから、見にいく。途中で10分の休憩いり。
しかし、長さは感じさせない。こういう大作は、大味になったらいやだなあ、とおもったが、それも杞憂だった。
では、傑作か、どうかというと、個人的には保留したくなってしまう。なにか、本来のテーマから、問題を回避しているようにみえてしまうのだ。
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「日航機ジャンボ機墜落事故」を扱った映画だ、という程度の予備知識で見た。
航空会社対被害者家族の問題を正面からとらえた映画、としたら、興味があった。
最近、会社の組織犯罪が露見している、JR西日本のことが頭にダブってくる。
そうした、いまなおどこまで明らかになったのかわからない<事故の問題の本質>を鋭く描いてみせた作品か、とおもっていたのに、残念ながら、そうはなりきっていない。
中心のテーマが、男の生き方の対比にスライドしている。
会社組織のなかで、あくまで誠実に生きようとする男と、人を裏切っても自分の出世欲に燃える男の対比にテーマが移ってしまい、<事故の背後に何があったのか>を鋭くえぐった作品にはなっていない。
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主演の渡辺謙は熱演していた。彼を抜きに、この映画は成立しない。
もうひとり、権力欲のとりこになって生きる男を演じた三浦友和がいい。演技はオーバーでもなんでもないのに、彼がなんともいやな男に見えてしまう。名優だ、とおもう。
表情などはほとんど変わらない。悪役をやったときの、山村聡や佐分利信を連想してしまう。三浦友和は、その域に達した。
映画が終わると、社会的なテーマよりも、この二人の俳優の強烈な印象が残る。