かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

荒俣宏著『プロレタリア文学はものすごい』

プロレタリア文学はものすごい (平凡社新書)

プロレタリア文学はものすごい (平凡社新書)




ホラー・笑い・エロスが横溢する「忘れられた文学」を現代の眼で新たに読み直す、驚異の文学ガイド。


こんなすごい文が表紙のうちがわについている。


プロレタリア文学には中途半端な知識しかないので、このガイドに刺激されて、もっとプロレタリア作家のものを読んでみようかな、と手にとってみた。


読みはじめはおもしろい。「へえ、プロレタリア文学はそんなにおもしろいものなのか」と、著者の博識におどろきながら、読んでいく。


しかし、途中からその博識ゆえか、「プロレタリア文学はものすごい」というテーマからだんだん内容が拡散していってしまうようなはがゆさをかんじる。


もうすこし話の焦点をしぼってほしい、とお願いしたくなる。



しかも、、、


次のような結論で「エピローグ」がしめくくられていると、この本は、そもそも何を書きたかったのだろう、それではタイトルや宣伝文と話がちがうではないか・・・と考えてしまった。

ともかくも、プロレタリア版「芸術至上主義」の成果が、せいぜい中野(重治)の実作止まりであり、また大衆化路線の側も既成文学の技巧に学ぶのであれば、プロレタリア文学の将来は最初からお寒いものであったといえるだろう。つまり、プロレタリア文学は、芸術至上主義をいえるほど質の高いものではなく、また講談社系の大衆ロマンに勝てるほど大衆的なおもしろさをもたなかったのである。