かぶとむし日記

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梯久美子著『昭和二十年夏、僕は兵士だった』

昭和二十年夏、僕は兵士だった (角川文庫)

昭和二十年夏、僕は兵士だった (角川文庫)


著者の読み方は、梯久美子(かけい・くみこ)。


「web KADOKAWA」の「内容紹介」では、次のように紹介されています。


 戦争の記憶は、どのような形で存在し、その後の人生にどう影響を与えてきたのか。


それぞれの戦争体験が貴重なものですが、置かれた軍隊での地位によっても、戦争に対する距離感がちがうのが、読んでいてわかりました。


重い地位をもっていた金子兜太氏、大塚初重氏、池田武邦氏には、軍人としての誇りも、強い責任感もかんじられますし、戦後も、そういう視点から戦争をふり返っています。


しかし、戦争や軍隊がいやでいやで徴兵忌避を犯してまで逃げようとした三國連太郎氏や、何をしても要領が悪く、軍隊の劣等性であった水木しげる氏の話には、そんな軍人精神的なものはなく、戦争や軍隊が、生理的にいやでしかたがなかった・・・という、いまのわたしたちの感覚に近いものをかんじました。



池田武邦氏は、終戦後22歳で東京大学の建築科へ入学しますが、戦争体験のない若い学生たちのなかでは、過去に兵士であったということだけで、戦争協力者として軽蔑された・・・だから、大学に友達はなく、いつもひとりだった、と話しています。


国家のためを信じて戦いにいき、無残に死んでいった戦友たちの生き方が、すでに理解されないことの悲しみ、、、


その戦争が正しかったか間違っていたか、という歴史的な判断だけでは片付かない、池田武邦氏の複雑な感情、疎外感を、この本で知ることができました。